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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第83章
(夢って分かってて、見せ続けられる夢って、なんなのさ……)
その初めての経験に、ただの夢と分かっているのに少し心がゆらゆらする。
Eカップの胸。
「本当はずっと好きだったんだ」
「愛してる」
「恋人同士」
あまりにも現実離れしすぎた内容に、呆れ返る。
(夢の中って本当に自分の願望が、顕著に出るんだな……)
ヴィヴィはもう一度、魂が抜けそうなほど深い溜め息を零すと、ベッドから降りた。
寝室の扉を開け、いつも通り朝の支度にバスルームへと向かおうとしたその足は、何故か書斎の方へと突き進む。
かたりと小さな音を立てて開けられたデスクの引き出し。
そしてそこに並ぶ、二つのジュエリーケース。
その一つを開いたヴィヴィは、一対のダイヤモンドのピアスを見つめ、小さく肩を落とす。
(っていうか、エッチしながらピアス付けて貰うとか、訳分からん……)
「もしかして、ヴィヴィ……。欲求不満、なの……?」
そう自問自答したヴィヴィは、ならばその欲求不満を解消すべく、朝練をしこたま頑張った。
あまりに頑張り過ぎて1限目の授業中、うつらうつらとして、教師にテキストでぽかりとやられてしまったが。
(何やってるんだ、ヴィヴィってば……)
ランチタイム。
教室で手早くランチを取ったヴィヴィは、当てもなく一人でふらふら校内を彷徨い、講堂前のラウンジスペースに辿り着いた。
「あ……。今日……、七夕かぁ……」
そこに飾ってあったのは、2.5メートル程の七夕の笹。
(神様……もしかして七夕だから、いつもは見ないお兄ちゃんの夢を、ヴィヴィに見させたの?)
ヴィヴィは笹に近寄ると、その前のテーブルに置かれていた短冊を手に取る。
(でも神様、間違ってるよ? 織姫と彦星が年に一度の逢瀬をするのは、7月7日の夜――つまり、今夜なんだからね……?)
ヴィヴィはペンを手に取ると、短冊に書くお願い事を頭の中で思い浮かべる。
『恋が実りますように』
『大学に合格しますように』
『ジャンプの修正がうまくいきますように』
どれも叶って欲しい事なのに、何故かどれもピンとこない。