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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第83章
「ヴィヴィ……?」
自分を呼ぶその声に、ヴィヴィはふっと息を吐くと、しゅんと俯いた。
「恋愛って、難しいね……」
子供っぽく紺色のソックスに包まれた両脚をぱたぱたと上下するヴィヴィに、アレックスが驚きの声を上げた。
「おおっ 『お子ちゃま』ヴィヴィから、そんな言葉が聞ける日が来るとはっ」
「……うるさいもんっ」
そう言って頬を膨らませたヴィヴィに、アレックスが笑い声をあげた。
「あはは。悪い悪い」
そこで会話が途切れ、二人はぼ~としていた。
幼い頃から一緒なので、別に沈黙が怖いとか、焦ったりとかはない。
「七夕か……。もうすぐしたら、8月で夏休みだな~」
「ね~。アレックス、夏休みは米国帰るの?」
アレックスは、北米出身だ。
「ん~。たぶん、こっちで予備校通うかな? 俺バスケばっかりやってたから、いい加減本腰入れて受験勉強しないと」
「そっか」
「ヴィヴィは? 毎年英国に帰省してたよな?」
「うん……」
来月には8月になる。
もし8月に両親の生家に帰省しなくても、9月になれば留学を終えた匠海が帰国してくる。
(はぁ……。またヴィヴィ、お兄ちゃんに自分を閉ざして、『人形』みたいに抱かれるのか……)
『人形』か。
そういえば、自分を好きだと告白してくれた男子生徒達の大半が、自分を『人形』のように可愛いと評していた。
「ねえ、アレックス……。ヴィヴィって『人形』みたい?」
「え?」
「どうかな……?」
ヴィヴィは縋るような瞳で、長身のアレックスを見上げた。
「いや、ヴィヴィみたいな賑やかで面白い人形、ないだろ? すぐ拗ねるし、かと思ったらすぐ機嫌直ってケラケラ笑ってるし。あ~……、アニメのキャラクターの『人形』とかそういう意味なら、ありえそうだけど……。つまりヴィヴィがアニメのキャラっぽいってことな?」
そう言って面白そうに笑ったアレックスに、ヴィヴィは唇を尖らせる。
「ぶ~っ でも、ありがとう」
「え?」
「ありがとう、ちょっと、救われた……」
自分の発した意味の分からない質問に、茶化しながらもちゃんと答えてくれたアレックスに、ヴィヴィは心からお礼を口にした。