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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第83章
「お前ら女子が、初等部の頃、俺のこの天パーにリボン着けまくった辛い過去は、まだ俺の中で払拭し切れていないっ」
「あははっ だってアレックス、女の子みたいに可愛かったんだもん!」
初等部の頃のアレックスは背が低くて、髪ももう少し長かった。
くりくり巻き毛の彼は本当に女の子のように愛らしく、女子によってたかって玩具にされていた。
「うるせえっ」
ムキになって言い返すアレックスに、ヴィヴィは微笑んだ。
「……ふふ。ありがとう、アレックス。そんな事まで言って、ヴィヴィを元気づけようとしてくれて」
「ヴィヴィ……?」
真っ直ぐ自分を見つめてくるアレックスの視線が強すぎて、自分には眩しすぎて、ヴィヴィはゆっくりと視線を落とした。
「でも、忘れられないんだ……。忘れられるくらいなら、最初からあんな――」
「あんな……?」
言葉を止めたヴィヴィに、アレックスが心配そうに先を促す。
ヴィヴィは顔を上げると、小さく首を振った。
「……ううん。……もうすぐ予鈴鳴るね。行こう?」
ヴィヴィはぴょんとソファーから立ち上がると、アレックスの手の中からバスケットボールを奪った。
ていんていんと軽い音を立ててドリブルするヴィヴィに、アレックスも立ち上がる。
「ああ。……振られちゃった、俺……」
ぼそりと上から降ってきた呟きに視線を上げると、自分の足の爪先に落下したボールがぶつかり、ころころとあらぬ方へと転がっていく。
「え? あ~~……っ」
ドリブルが失敗して転がっていくボールを追いかけようとしたヴィヴィよりも早く、アレックスがそれに大股で歩み寄り、大きな掌で拾い上げた。
「……なんでもない。……やっぱりヴィヴィは『お子ちゃま』だっ」
そう言って悔しそうな表情を浮かべたアレックスにヴィヴィはぽかんとし、そしてまた『お子ちゃま』呼ばわりされたことに「えぇ~~……」と不満の声を上げた。
「ふ。冗談。俺、ボールなおしてから教室戻るから」
にっと笑ったアレックスはそう言い置くと、手を挙げてラウンジスペースから去って行く。
「うん。後でね~」
ヴィヴィは見えていないだろうけれど小さく手を振り、アレックスの後ろ姿に声を掛けた。