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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第83章
カランコロンと予鈴が鳴り響くラウンジスペースから、数人いた生徒達が腰を上げて教室へと戻って行く。
一人そこに取り残されたヴィヴィは、視線を落とすと薄い唇をきゅっと引き締めた。
(17歳になったヴィヴィは、色んなお兄ちゃんを知ってはいるけれど、
お兄ちゃんの心が何処にあるのか、
何を考え何を思っているのかは知らない……。
解らない……。
怖い……)
シャラリと軽く涼しげな音に惹かれ振り返ったヴィヴィのスカートを、冷んやりとした風が凪いでいく。
それにさえ不安を掻き立てられ、ヴィヴィはゆっくりと大きな笹を見上げた。
『自分が自分で あり続けられます様に』
そう願いをしたためた短冊。
そう思う事すら、兄を手折った今の自分には、許されぬ事なのだろうか。