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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第84章
色気のない華奢な躰も、兄の全てを受け入れられないまだ青い奥底も、兄の昂ぶりを締め付ける膣の具合も、全て。
それらを思い起こす時、『禁断の交わりの相手――近親相姦の相手の躰』というレッテルで思い起こされるのが嫌なのだ。
(お兄ちゃんは自分から発した『近親相姦』について、何も触れてこない……。電話でも、メールでも……。あの発言に対して謝りもしなければ、言及もしてこない。……つまり、あれは本心ってこと、だよね……)
その兄の心無い発言のせいで、くしくも自分は倒れて入院までしたというのに。
(こんな事、うじうじ考えている間にも、時間は1分1秒と経過して、渡英する日が近づいているのに……。どうしよう……怖い……っ)
ヴィヴィはベッドの中で寝返りを打つと、くの字に折り曲げた自分の身体を両腕で抱き締める。
(怖いの……。もう、傷つけられたくないの。自分が弱くて狡いことは重々分かってるけど、もうこれ以上酷くされるのは、正直、耐えられるとは思えない……)
ぎゅっと瞑った瞼の奥が熱くなり、じわりと涙が滲み始めた。
泣いたってしょうがないのに。
けれど、今は泣いてでもすっきりとしたい気分だった。
コンコン。
突如響いた軽いノック音に、ヴィヴィははっと瞼を上げる。
(なんて、間の悪い……)
滲み始めていた涙を、瞬きを繰り返すことで何とか堪えながら、ヴィヴィは心の中で来訪者を詰った。
こんな時間に寝室に訪ねてくるのは、朝比奈くらいしか思い当たらない。
何かどうしても伝えて置かなければならない、重大な急用があったのだろう。
「はい……」
そう小さく返事を返し、ヴィヴィはゆっくりと上半身を起こした。
静かに開かれる扉の先、そこに立っていたのは、五分袖・膝丈のオールインワンを纏ったクリスだった。
「え……? クリス……?」
「ヴィヴィ……、入ってもいい……?」
遠慮がちにそう確認してくるクリスに、ヴィヴィはこくりと頷く。
「う、うん。どうぞ……」
(珍しいな……。クリスがヴィヴィの寝室に来るなんて……。もしかしたら中等部上がってからは、無かったんじゃ……?)