この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第84章             

 ベッドの上に座ったままのヴィヴィにクリスが近寄り、その隅に腰を掛けた。

「やっぱりまだ、眠れてなかったんだね……」

「え……?」

 クリスのその呟きに、ヴィヴィは驚きの声を上げる。

 そんな妹に片手を伸ばしてきたクリスは、大きな瞳の下の皮膚を撫でた。

「最近、寝不足っぽかったから……。目の下、少し暗くなってた……」

「あ……、そっか……」

 クリスの指摘に咄嗟に自分の顔に手をやったヴィヴィ。

 しかしその手はクリスに柔らかく掴まれた。

 驚いて見返した双子の兄の瞳に浮かんでいたのは、こちらも柔らかな色。

「ヴィヴィ、泣きたい時は、泣いていいんだよ……」

「……え……?」

 いきなりそう切り出され、ヴィヴィはぽかんとクリスを見返した。

(なんで、今、泣こうとしてたの、分かったんだろう……)

 そんなヴィヴィを覗き込むように、クリスが見つめてくる。

「ほら、前、言ってたでしょう……? 女の人は泣くと、意外にすっきりするって……」

「あ……」



    『体からいろんなものを出すって、ストレス解消にいいらしいよ?

     えっと、涙もそうだし、汗もでしょ?

     あと、意外なところで、よだれ垂らしまくるのもいいらしいよ?』



 それは昨年、英国の父の生家でリンクに行こうとしたヴィヴィが、匠海の言葉に傷つき泣いてしまった時、弁解のつもりで発した言葉だった。

「ほら、おいで……」

 そう誘いながら、掴んでいたヴィヴィの手首を軽く引き寄せるクリス。

「だ、大丈夫……」

 ヴィヴィは小さく頭を振る。

 さらりと波打つ金色の髪から、先程洗ったばかりのシャンプーの香りが立ち上がる。

 ふるふると振り続けるその頭の中にあるのは、少しの罪悪感と少しの戸惑い。

(泣くのは一人で出来るもん……。そこまでクリスに迷惑ばかり、掛けられないよ……)

 けれどクリスは聞き入れてくれなかった。

「一人で泣かれるの、嫌なんだ……。僕でよければ、胸、貸すから……」

 その言葉にヴィヴィは言葉を失った。

 7月の模試地獄。

 結果が振るわず、そして匠海の事もあり、取り乱して書斎で一人泣いてしまった自分。

 クリスはそれを知っていたというのか。

「………………」

/2774ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ