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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第84章
「お兄ちゃん、だからね……」
そのクリスの返しに、ヴィヴィはふと思い出し笑いをする。
「ふふっ」
「なあに……?」
「ん……。真行寺さんが前に『妹が男に振られては僕の前で泣きじゃくるから、慰めるのは慣れてる』って言ってたの、思い出した……」
匠海に紹介された真行寺とデートをし、その夜家に泊めて貰ったヴィヴィは、彼の前で道ならぬ恋に号泣した。
その時に真行寺が発したその言葉に、ヴィヴィは「普通の兄と妹というのはそういうものなのか」と思った。
本当はそれすら世間一般の兄妹では珍しいのだが、そんな事を世間知らずのヴィヴィが知る由もなく。
「マドカ……。激しく泣きじゃくりそうだね……」
頭の中で想像したのだろう、少し脱力したクリスにヴィヴィも笑う。
「ふふ、そうだね……それにしても」
「ん?」
「このルームウェア、物凄く可愛いね~」
ヴィヴィは急に話題を変えて、目の前のクリスの纏っている服をしげしげと見つめる。
水色の5分袖で半ズボンのオールインワン、襟元はパーカーになっている。
「え……。可愛い……? カッコいい、じゃなくて……?」
心外そうに尋ねてくるクリスに、ヴィヴィは大きく首を縦に振った。
「うん。パーカーになってて、ツナギで、この柔らか素材……滅茶苦茶可愛い!」
「え~~……」
本人はカッコいいと思って選んだらしいそれへの評価に、クリスはベッドに両手をついてうな垂れた。
「ヴィヴィも欲しいなぁ……」
「ここはメンズしか、作ってない……」
素材を確かめようと生地に触れてくるヴィヴィに、クリスはそう返してくる。
「そっか、残念~。でも、ホント可愛いっ」
そう言って満面の笑みを見せたヴィヴィに、クリスがその頭を再度撫でた。
「ヴィヴィには、笑顔が一番似合う……可愛いよ……」
「あ、ありがとう……」
(わぁ……、シスコン全開……っ)
と咄嗟に心の隅で突っ込んだヴィヴィだったが、とりあえず礼を言っておいた。
「ほら、横になって……。眠れるまで、傍にいるから……」
ヴィヴィをベッドに横たえたクリスは、自分もその横で肩肘をついて寝そべった。