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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第84章
もう8月でクーラーの効いた寝室、薄い羽根布団を軽く掛けたクリスは、その上からポンポンと妹をあやす様に叩いた。
「あ、バーミンガムでもありがとう。病院泊まってくれて」
ヴィヴィは横に寝ているクリスに、にっこりと微笑みかける。
「ああ……。そんなこともあったね……」
「うん。お化け怖かったから、クリスいてくれてほっとした……」
あの時は弱っていたので何も考えていなかったが、心底怖がりのヴィヴィは、あの時一人で深夜の病院で寝られたかと思い返すと、絶対無理だと思った。
「うん。ほら、もう寝よう……」
「うん……。ありがとう、クリス。おやすみなさい……」
ヴィヴィはそう就寝の挨拶をすると、クリスの顔を引き寄せて頬にちゅっとおやすみのキスをした。
同じく返してきたクリスのそれを受け止めると、ヴィヴィはゆっくりと瞼を閉じた。
「おやすみ、ヴィヴィ……」
そのクリスの声を聞きながら、ヴィヴィは久しぶりに安堵と共に眠りについた。
翌朝、4:50。
ヴィヴィの大きな瞳がぱちりという音と共に見開かれた。
「…………ふわわ……」
ひょいと上半身を起こしたヴィヴィは、腕を上に伸ばすと、また「ふわわ」とあくびをする。
(よく、寝た……。悪夢、一つも見なかった……)
そう思いながら伸ばしていた両腕から力を抜くと、その落ちた手の先にクリスの身体があった。
(あれ……クリス……?)
驚きと共に昨晩の事を思い起こし、ヴィヴィはふわりと微笑む。
(添い寝して、一緒に寝ちゃったのか……。ごめん……ううん、ありがとう、クリス……)
久しぶりにきちんと取れた睡眠に、ヴィヴィの頭の中は驚くほどすっきりし、前向きになれていた。
クリスの向こう側にある目覚まし時計を掴んでオフにすると、その手で双子の兄の頭を撫でる。
さらさらの髪の手触りに、その触感からも癒される。
クリスは朝が弱い。
それくらいの刺激で起きる様子もなく、ヴィヴィはしばらくその安らかな寝顔を見つめながら、クリスの頭を撫でていた。
(でも今、冷静になって考えてみれば……、さすがのお兄ちゃんも、英国の両親の生家ではヴィヴィの事、抱かないんじゃない……?)