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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第84章
篠宮邸は築年数もそれほど経っておらず、壁床にかなり防音措置が取られているし、各人に付きリビング・バスルーム・書斎・寝室と部屋が沢山ある。
一方、ロンドンもエディンバラも、両家とも素晴らしい豪邸だが築年数は経過している。
そして当たり前だが客室に泊まるので、寝室にバスルームが付いているワンルームタイプだ。
防音だってそこまでされていないだろう。
そんな寝室でヴィヴィを抱けば、きっと一発でばれる。
ベッドの軋む音、性行為独特の濡れた音、そして自分の高い嬌声で。
「………………」
ヴィヴィはいつの間にか止まっていたクリスを撫でていた手を動かし、柔らかく兄の表層を慈しむ。
(そうだよ。お兄ちゃんは「会いたい」とは言ったけど、「抱きたい」とは一言も言ってない……)
もしかしたら自分の思い過ごしだったのかもと、ヴィヴィは思い直した。
それに昨年渡英した時は、匠海は自分を抱こうとしなかったではないか。
ヴィヴィは肩の荷が下りた気がして、ふっと息を吐き出した。
その瞳が目覚まし時計の時間を確認し、クリスに声を掛ける。
「クリス……朝だよ……」
「………………」
小さな声で呼びかけたヴィヴィに、クリスは身動ぎ一つしない。
「クリス……もう5時だよ……?」
「……う~ん……」
今度は普通の声量で、しかも肩を揺らしながら起こしてみる。
30分程で外出の準備をし、屋敷を出なければならないのだ――早朝レッスンのために。
「お~い、起きて~?」
両手でクリスの肩を掴んでぐらぐら揺らしていると、その片手がかなり強い力で掴まれた。
「……五月蠅い……」
地獄の底からの声かと思わせるようなその低い唸り声に、ヴィヴィは絶句して手を止めた。
「……――っ」
(こ、怖……っ やっぱクリス、寝起き悪い~~……っ)
半ベソのような表情で一人困っていたヴィヴィに、救いの手が差し伸べられた。
コンコン。
軽いノックと共に掛けられた朝比奈の声に、ヴィヴィの表情がぱあっと明るくなる。
「おはようございます、お嬢様。お目覚めですか?」
寝室の扉越しに起床を確認してくる声に、ヴィヴィは助けを求める。