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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第16章
(『破滅へと導かれる少女』って、私のことよね……?)
実の兄である匠海に対する気持ちに戸惑い、苦しみ、自己嫌悪を繰り返した日々。
自分が気づいていなかっただけで、周りを振り回していた愚かな自分。
そして自分は気づいた――もうどうやっても、この自分の「恋心」からは逃れられないのだと。
ステップからの最後のジャンプを決めたヴィヴィはリンクサイドで停止し瞼を閉じて息を吐き出すと、かっと瞼を見開いて全身を使ったストレートラインステップへと足を踏み出す。
上半身の激しい動きに下半身が引きずられるのを紙一重で耐えて初めて成り立つステップだ。
(この恋を追い続けると、私は狂うのだろうか――?)
振付師のジャンナはそう言っていた。
嘆き、狂い――最後は達観の域に達し、運命に身を任せるしかなくなると――。
両肩を柔らかく使って両腕を押し出すその胸の内は、不安と恐怖が徐々に募ってくる。
(怖い……自分が自分じゃなくなるようで、恐い――)
けれど自分はきっとこのまま立ち止まって引き返すことはもう出来ないのだ。
ただ自分の恋心に引っ張られ、行くつくところまで行くしかない。
たとえその先に破滅が待っていようとも――。
最後のスピンを回り切った頃、ヴィヴィは腹を括っていた。
その表情は苦しさを堪えるものから、ふと何かを悟ったような笑みへと変化する。
(オリンピック……オリンピックで金を取れたら――)
両手を胸に添えて俯いたところから顔を上げていく。
(そうしたら私は、お兄ちゃんに「気持ち」を伝える……)
ヴァイオリンの和音の余韻とともに、ヴィヴィは自分の行く末を決断した。
少しの間、ヴィヴィはぼうとしていたようだった。
気が付くと場内は大歓声に包まれ、ヴィヴィの足元には信じられないほどの数の花束やプレゼントが投げ込まれていた。
足元から視線を上げると、観客は総立ちに近い状態だった。
ヴィヴィは一瞬何事か分からず目をぱちくりと瞬いたが、やがて自分のプログラムに対するスタンディングオベーションだと気づき、自然と頬が緩み始める。
四方に深々と礼をして持てるだけプレゼントを拾ってキスアンドクライに戻ると、リンク際までチームメイトが出迎えてくれた。