この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第84章
「やあ、遠路はるばるよく来たね! ジュリアン、グレコリー!」
祖父が両手を広げながら、屋敷の玄関で両親を迎え入れる。
「まあ~、5ヶ月会わないだけで、また大きくなった気がするわ! クリス、ヴィヴィ」
そう日本語で話しかけて来たのは、父の母――つまり双子にとっては祖母にあたる人。
彼女は生粋の日本人。
そしてその子供の父は日英のハーフで、その父と生粋の英国人の母から生まれた双子は日:英=1:3のクウォーターだ。
「グランマ! 久しぶり~。元気そうだね?」
ヴィヴィが自分よりも小柄な祖母に飛びついて、嬉しさを表現する。
「ええ、とっても元気よ。私の日本語はおかしくないかしら?」
そう言って茶目っ気たっぷりに笑う祖母は可愛くて、ヴィヴィは大好きだ。
「とっても綺麗だよ。会いたかったよ、グランマ……」
クリスがそう答えながら、ヴィヴィと代わって祖母を抱き寄せる。
「まあ、クリスったら。お帰りなさい」
それぞれ挨拶を交わし、この屋敷の家令に挨拶した一行は、応接室で昼食前の軽いティータイムを楽しんだ。
この屋敷には現在、祖父と祖母しか住んでいない。
父の兄―― 一族の跡取りが同居することになっているが、その際にはリノベーションをすることになっているらしく、そしてまだ祖父母も若くて元気だった。
「匠海は、まだ到着しないのかしら?」
一杯目の紅茶を飲み干そうとする頃、ジュリアンが不服そうにそう呟く。
「オックスフォードを出発するときに電話をくれたから、もうすぐ到着するとは思うけれどね」
そう祖父が答える。
「あの子はとても忙しいのに、月に1,2回顔を出して一緒にディナーを取ってくれる。本当に優しい子」
この屋敷にはロンドン近辺に在住している親族達が、週末はこぞってディナーに集まっているらしい。
そこに匠海も参加してくれると、祖母はとても嬉しそうに話してくれた。
「じゃあ、あの子が来る前に、バスルーム借りてもいいかい?」
父がそう断って、篠宮一家はランチの前にバスルームを借りることになった。