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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第84章             

「クリス様、ヴィクトリア様、そして匠海様のお世話は、今年も私がさせて頂きます。宜しくお願い致します」

 双子を部屋へと案内してくれるのは、昨年も世話になった執事のリーヴだった。

「リーヴ。今年もよろしくね~」

「宜しく、お願いします……」

 双子のその挨拶に、リーヴが微笑みながら誘導する。

 部屋を案内するために先を歩くリーヴのブルネット(栗毛)がさらりと波打つのを、ヴィヴィは綺麗だなと少し見惚れた。

「お足下、お気を付けください。リンクへの送迎も私がさせて頂きますね。お部屋は以前と同じく2階のベッドルームをご用意しております。手前から、クリス様、ヴィクトリア様、匠海様となります」

 手前のクリスの部屋の扉を開けたリーヴは、主を促した。

「バスの準備は整っております、どうぞごゆっくりお寛ぎ下さい」

「じゃあ、クリス、後でね~」

「うん、またね……」

 そこでクリスと別れたヴィヴィは、リーヴに隣の部屋に案内してもらい、彼とはそこで別れた。

 寝室に置かれたデスクの上に持っていた赤いバックを置いたヴィヴィは、はぁと溜め息を漏らした。

 そして自分の今日の格好をもう一度見直す。

 わざとチョイスした、その子供っぽいコーディネート。

 夏でも暑苦しく見られない程度に、なるべく露出を控えて子供っぽさを強調するようなデザインは、もちろん匠海対策で選んだのだ。

 取り越し苦労とは分かっていても、そうせずにはいられなかった。

(ヴィヴィ、どれだけお兄ちゃんに、抱かれたくないんだろう……)

「…………はぁ……」

 再度深い溜め息を零したヴィヴィは、しばらくその場でじっとしていたが、やがてふるふると頭を振って気分を入れ替えた。

 壁に作り付けのクローゼットを開き、荷物が片づけられている事を確認すると、そこから着替えを取り出す。

 クローゼットの扉を閉めた直後、かちゃりと部屋の扉が開かれる音がした。

 そちらを振り返ったヴィヴィは、ノックもなしに入ってきた人物を認め、言葉を失った。

(……お兄ちゃん……。いつの間に、到着……)

 後ろ手に扉と鍵を閉めた匠海が、ヴィヴィの方へと歩み寄って来る。

 フローリングの床を革靴が踏みしめる固い音と共に。

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