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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第84章
ヴィヴィはいつの間にか瞼を閉じ、自分を包み込む暖かな体温と、巻き付いている逞しい腕を全身で感じていた。
1分ほどしたころ匠海の抱擁が緩くなり、ヴィヴィはもう終わりなのだろうと寄せていた胸から顔を離した。
手早く湯あみを済ませ、祖父母と共に昼食を取り、クリスと勉強する約束もある。
しかし匠海のそれは、終わりの合図ではなかった。
ゆっくりと上から降りてくる匠海の端正な顔。
ふっと顔を上げたヴィヴィと兄の視線がぶつかる。
兄の灰色の瞳が熱っぽい――そう思った直後、ヴィヴィの薄い唇に柔らかな感触があった。
軽く触れるだけのそれに、咄嗟に物足りなさを覚えた自分。
そのことに少し驚いていると、また匠海の唇が触れてきた。
互いの潤った唇がしっとりと重なり、少しずつその角度を変えていく。
(柔らかいの……気持ちいい……)
本当に触れ合わせるだけだった口付けは、やがて表層を啄むものへと変わっていた。
ちゅっと吸い付き離れたかと思うと、ちゅうと唇の合わせ目を長く吸われる。
ぬるりと濡れた舌の感触を感じた瞬間、ヴィヴィは匠海の胸に添えていた両手をはっと押し返した。
(深いキスは、いや……)
そう拒絶を込めたヴィヴィに気付いたのか、匠海は妹の頭をまた撫でて、柔らかく唇を触れ合わせるキスに戻る。
いつの間にか強張っていた躰から、ほっと力を抜いたヴィヴィが分かったのか、匠海は張りのある唇でヴィヴィの下唇を食んだ。
(もう、離れたほうが、いいんだろうな……)
ずっと抱き合ってキスをしていたら、例えそれが深いものでなくても、特に男である匠海は我慢出来なくなるのではないか。
一抹の不安を覚え、ヴィヴィは少し頭を引いて俯いた。
「あ、の……もう……」
そう小さな声で呟いたヴィヴィが気に入らなかったのか、匠海は逃げたヴィヴィの後頭部を両掌でがっちりと掴むと、唇を押し付けてきた。
先程までとは比べ物にならないほど強引に奪ってくる口付け。
唇の合わせ目を解され、口内に侵入してきた匠海の舌は、遠慮なくヴィヴィの口内を弄りだした。
「んん……っ ふぅっ!?」
驚きで瞳を見開いたヴィヴィは、どんと匠海の胸を掌で押し返す。
けれど兄はびくともせず、口内の粘膜という粘膜を舌で舐め上げ続けている。