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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第84章
そのヴィヴィの頭をくしゃりと撫でた匠海は、静かにバスルームの扉を開けて出て行った。
少し遅れて聞こえてきた、部屋の扉の開閉音。
「………………」
ヴィヴィは億劫そうに、赤い半袖のカーディガンを脱ぐ。
背中のファスナーをジーと音を立てて下すと、ワンピースを脱ぎ捨て、その下のブラを外した。
そのままバスタブへと向かおうとしたヴィヴィは、自分の腕にシルバーの時計が巻かれたままであることに気付いた。
その文字盤を見て、ヴィヴィの顔がくしゃりと歪む。
微かな金属音と共に外した時計を洗面台に置くと、今度こそバスルームに入り、シャワーの湯が降り注ぎ、湯があふれ続けているバスタブへと浸かった。
白濁していた筈の湯は、シャワーの湯でかさが増し、その濁りが薄まっていた。
頭上から降り注ぐシャワーが、金色の髪を濡らし、頬を伝い落ちていく。
その感覚がまるで涙を流しているようで、ヴィヴィは「これは良い」と思った。
(今度から泣きたくなったら、こうしよう……)
ゆっくりと閉じられていく瞼。
その裏には、先ほど見た時計の時刻が刻まれていた。
たった20分の性行為。
その短い時間でこれほどダメージを受けてしまった自分は、なんとひ弱なのだろう。
細い顎を伝い落ちるシャワーの水滴。
その中に涙が含まれていたかどうかは、ヴィヴィしか知る由はない。