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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第85章
「……クリス……、どうしたの……?」
「入って、いい……?」
遠慮がちにそう確認してくるクリスに、ヴィヴィは目をぱちくりさせながら頷く。
「うん、もちろん」
そう言って横たえていた上半身を起こそうとしたヴィヴィを、クリスは「寝てていいよ……」と遮り、その枕元へと寄って来た。
「眠れてないんじゃないかと、思って……」
「クリス……」
今日一日様子のおかしかった妹を心配してくれていたクリスに、ヴィヴィはもう頭が上がらなった。
「眠るまで傍に居るから、安心しておやすみ……」
自分の頭を柔らかく撫でてくるクリスに、ヴィヴィの心がきゅうと疼いた。
「……クリス……」
「うん……?」
「添い寝、して……?」
そう甘えたヴィヴィに、クリスは満更でもない表情を浮かべたが、すぐに首を横に振った。
「う~ん。この前みたいに、隣で寝ちゃいそうだから、やめておく……」
「いいよ。一緒に寝て……?」
寂しそうな表情でクリスの手を握れば、双子の兄は静かに隣に横になってくれた。
「……甘えん坊のヴィヴィ、可愛い……」
そう歯の浮くような返事を返してきたクリスに、ヴィヴィは苦笑しながら薄い上掛けを彼のお腹に掛けた。
「ふふ……。なんかクリスの顔見たら、安心して眠くなってきちゃった……」
「睡眠導入剤……?」
「うん。しかも効果てきめんの」
にっこり笑ってそう言えば、クリスが困ったように眉尻を下げる。
「勉強中にその威力が発揮されないことを、祈るばかり……」
「あはは」
楽しげな声を上げたヴィヴィにほっとした表情になったクリスは、瞳を細めて口を開いた。
「おやすみ、ヴィヴィ……」
「クリス、おやすみなさい」
しばらくして、ヴィヴィの隣からはクリスの安らかな寝息が上がった。
双子の兄は睡眠に無上の喜びを感じるらしく、物凄く寝付きがいいが、物凄く寝起きが悪い。
ぱちりと瞼を上げてクリスの寝顔を見つめたヴィヴィの表情が、ほっと緩む。
(クリスといると、子供の頃に戻ったみたいで、安心する……)