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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第85章
片手を伸ばしてその柔らかな髪に触れる。
もう数え切れないほど触れてきたその手触りを確かめると、本当に眠気が襲ってきた。
先程まで心を曇らせていた暗雲がすっと晴れた気がして、ヴィヴィはゆっくりと深い眠りへと落ちてった。
8月11日――ロンドン滞在2日目。
早朝からリンクへと練習に行った双子と母ジュリアンは、12時過ぎにロンドンの屋敷に帰り着いた。
「お腹空いたけど、シャワー浴びてから食べたいな~」
そうヴィヴィが呟けば、クリスも「僕も……」と同意を示す。
「ではそのように、料理長に伝えおきますので、ごゆっくりどうぞ」
リンクへの送迎もしてくれる執事のリーヴに礼を言うと、双子は2階の客室へと戻った。
スケート靴を磨いて陰干しし、手早くシャワーを浴びる。
(なんか、ロンドン来てから、膝が疲れやすいな……)
たまにそういうことがある。
リンクの氷が柔らかすぎたり硬すぎたりすると、ジャンプの着地等で膝に負担が掛かる。
後で柿田トレーナーに教えてもらった簡易マッサージをしようと思いながら、ヴィヴィは白いバスローブを羽織った。
基礎化粧品で肌を整え、髪を乾かしたヴィヴィは、そのままクローゼットへと歩み寄る。
(う~ん。ど・れ・に・し・よ・う・か・な……?)
わざと楽しげに装って頭の中でそう選んだのは、水色と白のギンガムチェックのシャツワンピ。
露出は控えたいので膝丈でフレンチスリーブのそれに、カーディガンでも羽織ればばっちりだろう。
(うん。完璧にどっからどう見ても、幼い。細かいフリルがあしらわれてるし、ウエストに大きなリボンまで結んじゃうからね……)
対 匠海用に選んで持ってきた洋服の数々。
ヴィヴィはバスローブを脱いでベッドに放ると、こちらも子供っぽい水色と白のギンガムチェックの下着の上下を付け、ワンピースを纏った。
姿見の前で縦結びになってしまうリボンと格闘したヴィヴィは、ハンカチだけ持って部屋を出ようとした。
が、阻まれた。