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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第85章
「マッサージ、してあげようか……?」
クリスのその優しい問い掛けに、ヴィヴィは小さく首を振る。
「ありがとう。お風呂浸かりながら、自分で揉み解すね……」
今からピアノを弾くと言う匠海と別れた双子は、一緒に2階に上がり、就寝のハグとキスを交わして別れた。
リーヴが用意してくれたのだろう。
バスタブには既に湯が張られており、ヴィヴィは手早く身に纏っていた物を脱ぐと、白濁の湯に身を委ねた。
酷使した右手を揉み解し、ふわわと小さなあくびを漏らす。
(あ、そういえば、膝もだった……。モミモミ……)
スケートで疲れた膝も、その下のふくらはぎも揉み解しながら、ヴィヴィは小さく首を傾げる。
(お兄ちゃん、今日、えっちしに来なかったな……)
てっきり前日の2日間の様に、日中抱きに来ると思っていた匠海は、まだ今日はこの部屋を訪れていない。
しかしその考えは杞憂だったようだ。
微かに聞こえた扉の開閉音と近づいてくる固い足音。
そして躊躇なく開かれるバスルームへと続く扉。
白い湯気が立ち上るバスタブに佇む妹を認めた匠海は、さっさと自分の衣服を脱ぎ捨ててガラスの扉を開けてこちらへと入ってきた。
(ピアノ、弾くんじゃなかったの……?)
咄嗟に思ったその疑問は、わざわざ口に出して問うほどの価値もない。
(ヴィヴィにはプライベート、無いの……?)
下手したらトイレの中まで入ってきそうな兄のその傍若無人な振る舞いに、一瞬かちんときたヴィヴィだったが、すぐにその感情も立ち消えた。
(好きにすればいい……)
捨てばちになったヴィヴィの小さな頭の中、先程練習していた『木枯らし』が煩い程鳴り響き始めた。
まさに今のヴィヴィに相応しいその陰鬱な選曲に、さらに心が重くなる。
匠海がバスタブに入ろうとしているのにも関わらず、場所を開けようともしないヴィヴィ。
しかし簡単にひょいと持ち上げられ、匠海の股の間に下されてしまう、自分の貧弱な躰。
軽く引き寄せられて密着する兄の胸板と妹の細い背中。
そして既に反応している匠海の昂ぶりは、ヴィヴィの腰を押し返している。