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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第17章                  

(えっと、肩甲骨をくっつけるようにして前に出して、肩甲骨を開くように後ろに引く。胸を自分のできる範囲に左右にプッシュ。頭が動かないように体の中に一本のポールが入っているように、その周りを動くよう意識しながら……)

 美夏先生に言われたことを思い出しながら、少しでも滑らかにしかも妖艶に見えるように動く。

 腰は動かさずに肋骨だけを動かすのでなかなか大変だ。

 けれどベリーダンスのおかげか、ヴィヴィは肩や胸、腰の可動域が広がった気がする。

 もう一度曲を掛けようとした時、防音室の分厚い扉がノックされた。

 小走りに扉まで行って鍵を開けると、三田ディレクターが立っていた。

 ヴィヴィは彼女を招き入れるとまた鍵を掛ける。

 ちなみに扉のガラス部分には紙を張り付けて中が覗き込めないようになっているし、扉の廊下側のノブには「ヴィヴィ使用中につき、立入禁止!」というタグがひっかけられている。

「どう、順調?」

「何が……? 胸の成長が……?」

 やさぐれたように三田に突っかかるヴィヴィに、三田がくくくと笑う。

「そんな訳ないでしょ~。ベリーダンスの出来よ」

「ちょうど今から通そうと思ってたところです」

 ヴィヴィはそう言ってオーディオの傍まで歩み寄ると、CDの再生ボタンを押す。

 笑顔を湛えながら鏡の前でポーズをとると、三田がすばやくカメラを構えたのが鏡に映った。

 独特な打楽器の音色が流れ始め、まずは高く上げた両手はそのままに腰だけ躍らせる。

 腰を前後左右に動かすヒップサークル、腰を振るわせるヒップシュミ、腰を八の字に回すフィギュアエイトをそれぞれ組み合わせながら、次第に激しい踊りへと変化する。

 ゆっくりと半回転してヒップをポンと突き出して、また腰を回しながら前へと向き直る。

 斜めに構えて腰を上下に動かすヒップドロップで三田を誘惑すると、次はダウンキックという腰を下に落とす方向にアクセントを置いて、上下に動かしながらつま先をキックする動きで挑発したりもする。

 やがて上半身も使い悩ましげに動かされた右手で首の後ろを撫でると、ヴィヴィの暗めの金髪がさらりとなびく。

 変拍子が多用される難しい曲にヴィヴィは何とか音を拾い、音がぴたと止まるところではポーズを決めて溜めを作り、メリハリのあるダンスを追及する。

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