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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第17章
そして曲は問題の部分に差し掛かる。
ジルの高い金属音に合わせ早いショルダーシェイク(肩を交互に前後させる動き)をしながら胸を振る。
(そうだよ! サロメも十五歳なんだから、そんなに胸、ないよね!)
昨今の女子高生の成長ぶりを無視して現実逃避しながら踊りを進め、終盤のヘッドスライドに移る。
顔は真っ直ぐに向いたまま、下顎の骨でリードするように顔全体を左右にスライドする。
指先まで表情を持たせた両手は胸の前でクロスし、目の玉をぐりぐりと動かすように頭の動きと同方向へと動かす。
最後は両腕を広げながら上半身を出来るだけ前に倒し、ヒップシェイクをしながらゆっくりと上半身を起こしていく。
ターンを繰り返してラストは片膝をつき、その膝に片肘を乗せて顎を添えると、ヴィヴィの五分程のダンスは終了した。
ぱちぱちと一人分の拍手の音が防音室に響く。
「凄いすごい、明らかに上達してるっ! 動きも滑らかになったし、ちょっと妖艶さも出てきた」
本当かどうか不明だが、そう言ってヴィヴィの健闘を湛えてくれた三田にヴィヴィは苦笑いを返す。
「ホントに? でもNHKで放送するときは、ヴィヴィの胸とお腹にはモザイクかけといてくださいね」
ヴィヴィはそう言って、胸の下までのトップスから露出している引き締まったお腹を手のひらで隠した。
ベリーダンスにはアンジュレーションという腹筋を使って腹を凸ませたり凹ませたりしながらウエーブさせる動きがあり、それを確認するためにはこのスタイルが一番なのだ。
「あはは、そんなに気にすることないのに。あ、そうだ。今日はプレゼントがあるの」
一ヶ月の密着ですっかり気心を許しあったヴィヴィに、三田がカバンから何やらごそごそと取り出して紙袋を渡した。
「プレゼント? なんですか?」
不思議そうに紙袋を見つめるヴィヴィに、三田が「開けてみて」と促す。
紙袋を開くと中からは黒色のベールが出てきた。
透けるシフォン素材の長方形のそれ周りには金色の刺繍と、小さな硬貨の様な金属が付いている。
「うわぁっ! 綺麗……。どうしたんですか、これ?」
「いつも頑張ってるヴィヴィちゃんへのご褒美」
片目を瞑って見せた三田に、ヴィヴィの顔がみるみる綻ぶ。