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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第17章
「わぁっ!! ありがとう、三田さん!」
ヴィヴィはそう感謝の礼を口にすると、三田に抱き着いた。
「そんなに喜んでもらえて私も幸せ~。使い方教えてあげる」
そう言ってヴィヴィの抱擁を解いた三田は、黒いベールをヴィヴィの細い腰に巻きつける。
「こうやってヒップスカートにしてもいいし、ベリーダンスってベール使う踊りもあるでしょう? サロメのダンスも『七つのヴェールの踊り』だし」
「うん! 使う。わぁ……ホント綺麗」
ヴィヴィは瞳を輝かせて鏡に映ったベールをしげしげと見つめる。少し腰を揺らしてみると、しゃらりと華奢な金属の触れ合う音がするのも気に入った。
「ヴィヴィちゃん、いっつも黒のスパッツとトップスの練習着ばかりだから、たまにはこういうので気分変えてみるのもいいんじゃない?」
「うん! テンション上がるねっ!!」
ヴィヴィはダンスの一節を試しに踊ってみる。
やはり見た目というのも大事だ。
練習着だけよりもベールを捲いたことで随分と受ける印象が異なる。
「ありがとう。このお礼はいつか必ず!」
そう嬉しそうに言ったヴィヴィに、三田はにやりと笑った。
「お礼は、『オリンピック金メダリスト』の独占取材一番乗りでいいです」
その言葉に、ヴィヴィはぷっと吹き出す。
「う~ん、保証は出来ないけれど、頑張っていい色のメダル取ります!」
謙遜したヴィヴィに、三田はあははと声を上げて笑った。
その翌日、ヴィヴィはまた篠宮邸の防音室にいた。
しかし今日は鏡の前ではなく奥にある小さなミキサールームにいた。
目の前のパソコンと様々な機器を、ヴィヴィはその小さな頭を抱えて恨めしそうに見つめていた。
(使い方……分かんない……)
手元には朝比奈が見つけてきてくれた機器の説明書が置かれてはいるが、たいがいの女子というのは如何せん機械やその説明書を読み解くという行為に不得手なのだ。
そしてもれなくヴィヴィも苦手だった。
機械いじりの好きなクリスに助けを求めようという名案が一瞬頭の隅を横切ったが、ヴィヴィはふるふると首を振る。
「クリスはクリスで忙しそうだからなぁ……」