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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第86章               

「………………っ」

 そんなにセックスが上手で器用ならば、こんな苦しさなど感じさせないで欲しかった。

 それこそ上手く立ち回って、最初から「愛してるよ」と嘘を吐いてでも、恍惚とする快感と虚像の上に成り立つ喜びを与えてくれても良かったのではないか。

 それでは駄目なのか? 

 駄目だったのか?

 じゃあ兄は、妹である自分が苦しんでいる姿を見たかっただけなのか――? 

「ああ、舌まで締め付けて……。エッチな子だ」

 その匠海の声に、ヴィヴィははっと覚醒した。

 いつの間にか、膣内を味わう様に差し込まれていた兄の舌が抜かれていた。

「このまま舌でイきたい? それとももう、入れて欲しい?」

 きしりと音を立てて上半身を上げた匠海が、シーツの上で虚脱した自分を見下ろしてくる。

「……欲し、い……」

 ヴィヴィがそう答えた理由は、一秒でも早く兄に果てて欲しかったから。

 そして『人形』の役目から、自分を解放して欲しかったから。

 もう昨日みたいな失態を犯し、母やクリスに心配を掛ける訳にはいかない。

「ヴィクトリア……もっと可愛く、お強請りしてごらん?」

 そう煽る匠海は、とても楽しそうだ。

「……ヴィヴィの中、お兄ちゃんので、ごしごし……して……?」

 ほとんど棒読みのそれにも、匠海は満更でもない表情を浮かべていた。

 ヴィヴィの太ももの後ろを押さえた匠海は、正常位でヴィヴィの中に亀頭を捩じ込んできた。
 
 くちゅりという蜜音と共に感じたその大きな異物の感触に、ヴィヴィは咄嗟に両腕を伸ばして匠海の胸に手を付く。

「お兄ちゃんっ!?」

(え……? ちょっと待って……っ ベッドでするの……?)

 てっきりバスルームへ連れて行かれると思っていたヴィヴィは、驚いて匠海を見上げる。

「ああ、大丈夫。音はさせないから」

「……え……?」

(えっちするのに、音、しないの……?)

 匠海が体重移動しただけでぎしりと軋むこのベッドで、一体兄は何をする気なのか。

 不安になったヴィヴィに、匠海は「大丈夫だよ」と甘く囁いてくるが、正直信頼していないので不安感は拭えない。

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