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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第87章
「日本は開催国だから、最後……205番目だね……」
「そっか~! っていうか、せっかく東京で夏季五輪があるというのに、ちょうどその時期に英国にいるというこの矛盾……」
開脚しながら自分もぐったりと前に突っ伏したヴィヴィに、クリスが続ける。
「そうだね。でも、僕らも観に行けるでしょう……?」
「ね! 楽しみだねっ」
8月15日~8月31日まで行われる東京夏季五輪(本来は:2020年7月24日~8月9日です。えへ)。
夏休み中だが、BSTでは課外授業として一部競技を観戦しに行く予定となっている。
1クラス20名、幼等部~高等部まで合わせたら結構な人数となるので、さすがにマイナー競技だろうが……。
(でも、もうそんなに経つのか……)
韓国・平昌で2018年2月に行われた冬季五輪。
自分が初めて出場した時は、まだ中等部3年生だった。
そして今、高等部3年生になった自分は、何も変わっていない。
ISU世界ランキング1位、東大受験、スポンサーも沢山付き、自分を取り巻く環境はがらりと変化したのに、全く成長していないその中身と、匠海との関係。
「………………」
ヴィヴィははっと我に返り、ぐっと唇を引き結ぶ。
(違う……。少しは成長したもん。自分の事、好きになれるよう努力して、そうなり始めてるもん……)
自分を好きでいること。
更に好きになれるよう精進し続けること。
それは、今のヴィヴィにとってはとても大切で、自分を保ち続けるのに必要な行為。
「あ、やっと、日本だね……」
クリスのその声に、ヴィヴィはいつの間に落としていた視線を上げ、画面を見入る。
「さすが開催国……。すごっ 列が途切れない。っていうか……」
開催国ならではの大人数の選手団に、ヴィヴィは目を見張るが。
「真っ赤……だね……」
「うん。真っ赤だ! うふふっ」
クリスの指摘通り、日本の選手の纏うユニフォームはジャケットもパンツもスカートも真っ赤。
ただ身体のラインが綺麗に出るよう計算されているらしくスタイリッシュで、白い立襟やスカーフとタイが映えて結構素敵だった。
「2年後、僕らも一緒に出ようね……?」
「うんっ 約束だよ?」
そう将来の約束を交わした双子は、ストレッチを済ませフィットネスルームを出た。