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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第87章
「うえ……っ!? あ……っ ち、違うっ! ごめん、違うのっ」
夢を見ていたのだ。
匠海の夢を見ていて、その夢が最悪で、ついつい押し殺していた心が漏れ出てしまった。
リンクからの帰りの車の中、ヴィヴィは隣でしゅんとするクリスに縋り付き、必死に謝る。
「……着いたよ、屋敷……」
クリスのその指摘に、確かに先程から車の走行音がしていなかったことに気付いた。
「あ……。ほんとだ……」
ヴィヴィを車内に置いて、運転手が開けてくれた後部座席のドアから出て行くクリス。
焦って自分も降りてその背を追い駆ければ、しゅんと丸まった背中から聞こえてくるのは寂しそうな声。
「……そっか、五月蠅かったんだ、僕……」
「ち~が~う~っ ごめん、クリス、ごめんってっ!」
ヴィヴィはクリスの腕に縋り付くと、何度も謝罪を口にした。
そのまま3階の部屋まで上がった双子は、まだ不毛なやり取りをしていた。
「どうせ……僕は……」
「クリス~っ ごめんね? 本当にゴメンねっ 寝ぼけてただけのなの!」
クリスの腕に自分の腕を絡めながら顔の前で両手を合わし、ヴィヴィは必死に謝る。
「じゃあ、ほっぺにキスして……?」
「え? そ、それで、許してくれるの?」
「うん……」
そう言って20cm差のある背を屈めてきたクリスの頬に、ヴィヴィは迷わず口付けする。
「後、一緒にプールで泳いでる時に、水着姿を恥ずかしがらずにちゃんと見せて……。お茶の時間の後、膝枕して……」
「え゛……?」
クリスのさらなる要求に、ヴィヴィは変な声を上げる。
(膝枕はいいけどさ……。水着は、う~ん……)
「嫌、なの……?」
自分の目の前で見下ろしてくるクリスに、ヴィヴィは折れた。
「わ、分かったよ……。ねえ、クリス?」
「うん?」
「本当に、ごめんね? あんなこと、クリスには絶対に思わないから」
ヴィヴィは再度、心を籠めて謝罪する。
クリスは自分を支え、愛し、励ましてくれる大切な双子の兄。
感謝こそすれ、「五月蠅い」等とは思う筈がない。
「分かったよ……」
瞳を細め、ぽんぽんと頭を撫でてくれるクリスの、そのウェアの胸にヴィヴィは飛び込む。
「大好き、愛してる、クリス……」
「僕も、愛してる……」