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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第87章
「ふわわ……。さすがに移動17時間は、疲れる……」
衣服を脱いで使い慣れたバスルームに入る。
ヴィヴィの好きなバスソルトの香りにホッとし、その湯で疲労した身体を癒す。
ちょっとウトウトして、タイミングよく朝比奈に起こされて。
身も心もすっきりしたヴィヴィは、いつでもごろごろできるようにとラフなワンピに着替えると、バスルームを出た。
「ヴィヴィいない間、なんかあった~?」
リビングの白皮のソファーに座ったヴィヴィは間延びした声で尋ねながら、朝比奈が入れてくれたアイスティーを啜る。
「オリンピックが開幕しました」
ヴィヴィの傍に立った朝比奈が、そう澄まして答える。
「知ってるっ」
「ふ、冗談です。メールでもご連絡している事ばかりですが、スケートの衣装が届いております」
朝比奈の冗談に笑っていたヴィヴィは、そのニュースにぽんと両手を叩く。
「あ、そうだったね。今日リンクへ持って行こう」
そして、実際に着用して不具合を確認して、調整してを繰り返して……と考えていると、朝比奈がヴィヴィの目の前に手紙と小包を置いた。
「後は、お手紙とファンレターと、匠海様から小包が届いております」
「え……? お兄ちゃんから……?」
(何だろう……? 何かを受け取る予定は、無かった筈だけど……?)
首を傾げたヴィヴィに、朝比奈が手にしていた一つの小包を手渡される。
「はい。こちらです」
ヴィヴィは厚さの薄い小包を受け取ると、その発送日に目をやる。
8月14日――ロンドンの屋敷からオックスフォードへと兄が帰ったその日だった。
ちょっと手間取りながら開封すると、中に入っていたのはカードとCD一枚だけ。
(CD……? ……あっ!)
やっと兄の贈り物の内容に思い当ったヴィヴィは、朝比奈を見上げる。
「朝比奈。クリスに15分後にそっちに行くって、伝えておいてくれる?」
「畏まりました」
主の言付けを預かりクリスの部屋へと向かう朝比奈と別に、ヴィヴィは小包を手に書斎へと急ぐ。