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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第87章
PCを立ち上げ、レコーダーにCDを入れると、流れてきたのはやはり思っていたとおりの曲。
ヴィヴィは目蓋を閉じて最後まで注意深く鑑賞すると、それを取り出しケースにしまった。
そして、一枚の直筆のメッセージカードに目を落とす。
『 バースデープレゼント
大変お待たせ致しました。
匠海 』
(どうして今頃、これを贈る気になったんだろう……)
電話を掛けようかと思ったが、計算してみるとオックスフォードは今日の早朝3時だった。
ヴィヴィはメールソフトを開くと、お礼のメールを送信し、クリスの部屋へと勉強するために移動した。
昼前から勉強して食事を取り、休憩を挟みながらまた勉強をしていた双子は、リンクへと向かった。
ヴィヴィが届いたSPとFPの衣装を持参すると、早速着用して使用感を確かめることになった。
ちなみにエキシビションの衣装は既に用意済みで、振り付けをしてくれた高畑大輔の意見を取り入れて満足したものが出来上がっていた。
ストレッチを終え、SPの衣装に身に纏ったヴィヴィは、その着用感にまずまず満足する。
「ん……、ちょっと、ウェスト、ぶかぶか……?」
ロッカールームで鏡の前に立ち全身を確認していると、母ジュリアンが入ってきた。
「痩せたんじゃない? 旅行行って太るどころか痩せて帰ってくるなんて、変な子ね?」
「……それだけ和食が好きって事ですぅ~」
実際、今日のランチで料理長の和食を頂いたヴィヴィは、「あ~、やっぱり自分は日本人だな~」と実感したくらい。
「ま、詰めて貰うかどうかの判断は、もう少し後でもいいかもね。じゃあ、行きましょう」
先にロッカールームを出て行こうとする母を、ヴィヴィは呼び止めた。
「マム……じゃない、コーチ。あの、SPの音源、変えたいのですが……」
「え……? 音源? 曲じゃなくて、音源でいいの?」
ヴィヴィが差し出したCDに、驚いて目を瞬かせるその仕草は、娘と瓜二つだ。