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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第87章
8月第3週――帰国したその週末に、双子は予備校の模試『8月 第4回センター本番』を受けた。
以前、クリスに忠告された、
「8月にある『第4回 センター本番』で、
センター試験の合格点を超えるのを、目標にしなければならない……」
その目標を胸に心してかかった結果、ヴィヴィはクリスの求めるレベルと同等の成績を収めた。
その事に心が軽くなり、翌週のBSTの課外授業中、ヴィヴィはにっこにこだった。
夏休みの最終週、BSTの高等部の生徒、総勢60名が制服姿で向かったのは、今まさに東京で行われている夏季五輪の会場。
「わ~っ 地下鉄だぁ~っ!」
東京メトロ日比谷線の銀座駅構内、そう歓声を上げたヴィヴィは、到着した車両に乗り込んでも物珍しそうに辺りをきょろきょろしていた。
「ヴィヴィ……。どんだけお嬢なんだよ……」
隣に立っていたマイクが、信じられない表情でヴィヴィを見下ろしてくる。
「さっきも、Suica持ってないの、ヴィヴィだけだったしね?」
カレンもそう続けて、両手を上に上げてみせる。
「っていうか、なんでクリスは持ってたの? 殆んどヴィヴィと行動範囲一緒の筈なのに~」
恨めしそうにヴィヴィがクリスを問い詰めると、クリスは「持ってるのが、常識……」とつれない返事を返すのみ。
「むぅ……。でもいいんだ~! ヴィヴィ、PASMO買っちゃったんだも~んっ うふふ」
半袖白シャツの胸ポッケから裸のPASMOを取り出したヴィヴィは、顔の前でそれをかざして更に嬉しそうに笑う。
「はいはい。ヴィヴィは幸せそうでいいなあ……」
「そうだねえ、この受験戦争まっしぐらな時に」
「そう考えれば“箱入り娘”って知らないこと一杯で、これからの人生、新しい発見が多くて楽しいかも?」
クラスメイト達のその酷い突っ込みに、ヴィヴィは唇を尖らせる。
「はいはい、みんな。公共交通機関で騒がない! もう高等部3年なんだからな?」
引率の担任にそう注意された総勢20名は、素直に「「「は~い……」」」と返事する。
ちなみに1年生と2年生も同じ場所に向かうが、1本ずつずらして行動しているので、ここにいるのは3年生だけだった。