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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第87章           

「あ~あ、ヴィヴィのせいで怒られた」とマイク。

「なんでさっ!?」

「ヴィヴィが世間知らず過ぎるから」とジェシカ。

「どう関係してるのさっ!?」

 一応少しは声のトーンを落としてじゃれ合うヴィヴィ達に、背後からもう一人の引率の女教師が近づいてくる。

「……だから、静かにしろっての!」

「「「ふぁ~い……」」」

 皆がみな長身で大人っぽく、身体が大きな外国人の生徒達が、教師に怒られてしょぼんとしているその光景に、同乗している他の客からくすくすと忍び笑いが聞こえてきた。

「っていうか、なんで貸切のバス移動じゃなかったんだろうね?」

 乗り換えの八丁堀駅でJR京葉線を待つ間、ケイトがそう首を傾げる。

「やっぱり五輪で交通機能がマヒしてて、車移動だと辿り着ける保証が無かったんだって」

 到着した車両に乗り込みながら、アレックスが説明する。

「そのおかげで、地下鉄もJRも乗れた~」

 にやにやが止まらないヴィヴィは、車窓からずっと外を眺めていた。

 さすがに混んでいる車内では大人しくしていた生徒達は、新木場駅に着いた途端、きゃっきゃと騒ぎ出した。

「おお、夢の島、初上陸!」

「俺、夢の島ってゴミの匂いがするんだと思ってた」

「んな訳無いじゃん。私、前にそこの熱帯植物館に来たことあるし~」

 夢の島競技場までの道を歩きながら話していると、ジェシカが五輪専用の案内表示を指し示す。

「っていうか、知ってた? 隣の会場でアーチェリーとバスケットボールとバトミントンやってるんだって」

「え~っ なんで寄りによって馬術なんだよ~? バスケの方が全然面白いじゃん」

 バスケをしているアレックスが不服そうにそう喚くと、担任がにやりと笑って寄越す。

「そんなもの、馬術が英国発祥のスポーツだから、に決まってるだろう?」

「え~っ じゃあせめて、テニスが良かったです~。あれも英国発祥ですよね?」

 さすが英国大使を父に持つカレンがそう応戦すると、引率の女教師に一笑に付される。

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