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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第87章           

「馬鹿おっしゃい。あんなメジャーな競技、60名分のチケット、取れるわけないでしょう? それに高等部だけじゃなくて幼等部~高等部の全生徒が、観戦に行くんだからね?」

「……ははは」

 至極ごもっともなその返しに、一同乾いた笑いを零すしかなかった。

「ヴィヴィは、馬術、楽しみだけど?」

「僕も……。間近で見るの、久しぶり……」

 双子のその言葉に、カレンが微笑む。

「ああ、篠宮家はお兄ちゃんが乗馬してたから、何度も応援に行ってたんだね?」

「うん。お馬さん見てるだけでもかなり楽しいよ? 綺麗だし、大きいし、ね? クリス?」

 ヴィヴィが隣のクリスを見上げる。

「うん。障害なんかは、バーを飛び越える時、迫力凄い……」

 会場のエントランスで、団体客用のチケットを受け取り、荷物や金属探査のチェックを受けると、一向は会場に足を踏み入れた。

「わあっ 馬だ馬だ!」

「でっかい! 超綺麗っ」

「乗馬服って、かっこいいっ」

 馬場を目にした途端、はしゃぎ出した現金な生徒達を、引率の教師がシートを探して着席させる。

 すぐに競技が始まり、皆、人馬が一体となって障害を越えて行くのを興奮して見守っていた。

「今日は日本の選手は出ないみたいだね?」

「あ~、3次予選でみんな敗退したみたい」

「個人も団体も、今のところ、トップは英国みたい。ドイツと僅差だけど」

 皆がタブレット端末やスマートフォンで予選の結果等に目を通し、目の前の競技に見入っている中、ヴィヴィの隣に座っていたカレンが、小さく声を上げた。

「……あ、れ……?」

「どうしたの、カレン?」

 親友の横顔を見つめるヴィヴィに、カレンが難しそうな表情で腕を組む。

「ん……。あの人、どっかで見た事が……あっ!!」

「え?」

「あの人! 王子様だ……っ」

 そう小さな声で叫んだカレンに、前列に座っていた2年生の生徒まで振り向く。

「は? 王子様ぁ~?」

 ヴィヴィはカレンのその戯言のような単語に、語尾を上げながら親友の視線の先を辿る。

(なになに~? イケメンウオッチャーなカレン様に “王子様” 呼ばわりされる、クールなイケメンはどこかな~?)

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