この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第87章
「馬鹿おっしゃい。あんなメジャーな競技、60名分のチケット、取れるわけないでしょう? それに高等部だけじゃなくて幼等部~高等部の全生徒が、観戦に行くんだからね?」
「……ははは」
至極ごもっともなその返しに、一同乾いた笑いを零すしかなかった。
「ヴィヴィは、馬術、楽しみだけど?」
「僕も……。間近で見るの、久しぶり……」
双子のその言葉に、カレンが微笑む。
「ああ、篠宮家はお兄ちゃんが乗馬してたから、何度も応援に行ってたんだね?」
「うん。お馬さん見てるだけでもかなり楽しいよ? 綺麗だし、大きいし、ね? クリス?」
ヴィヴィが隣のクリスを見上げる。
「うん。障害なんかは、バーを飛び越える時、迫力凄い……」
会場のエントランスで、団体客用のチケットを受け取り、荷物や金属探査のチェックを受けると、一向は会場に足を踏み入れた。
「わあっ 馬だ馬だ!」
「でっかい! 超綺麗っ」
「乗馬服って、かっこいいっ」
馬場を目にした途端、はしゃぎ出した現金な生徒達を、引率の教師がシートを探して着席させる。
すぐに競技が始まり、皆、人馬が一体となって障害を越えて行くのを興奮して見守っていた。
「今日は日本の選手は出ないみたいだね?」
「あ~、3次予選でみんな敗退したみたい」
「個人も団体も、今のところ、トップは英国みたい。ドイツと僅差だけど」
皆がタブレット端末やスマートフォンで予選の結果等に目を通し、目の前の競技に見入っている中、ヴィヴィの隣に座っていたカレンが、小さく声を上げた。
「……あ、れ……?」
「どうしたの、カレン?」
親友の横顔を見つめるヴィヴィに、カレンが難しそうな表情で腕を組む。
「ん……。あの人、どっかで見た事が……あっ!!」
「え?」
「あの人! 王子様だ……っ」
そう小さな声で叫んだカレンに、前列に座っていた2年生の生徒まで振り向く。
「は? 王子様ぁ~?」
ヴィヴィはカレンのその戯言のような単語に、語尾を上げながら親友の視線の先を辿る。
(なになに~? イケメンウオッチャーなカレン様に “王子様” 呼ばわりされる、クールなイケメンはどこかな~?)