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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第17章
「ヴィヴィだって自分だけで完璧に作れるとは思ってないよ? ただ、今なにもせずにこの曲やりたいって言っても、絶対に聞く耳を持ってもらえないだろうなって思って……それで――」
「とにかく自分の出来る範囲でプログラムを創って滑って見せて、熱意を示そうと?」
匠海が続けた言葉に、ヴィヴィは戸惑いながら頷く。
その途端、匠海は苦笑した。
「ああ、だから最近、一人で閉じ籠っていたんだな」
「うん……防音室占領してばかりで、ごめんね……?」
家族みんなが使用するこの部屋を独り占めばかりしていたことに気づき、一番使う頻度の高い匠海に迷惑をかけていたのではと、ヴィヴィは頭を下げる。
その胸の内で「私って本当に、思い立ったが吉日の猪突猛進型……」と深く反省する。
「いや、俺は最近他のことが忙しかったから、別に気にしてないよ」
そう言ってくれた匠海に、ヴィヴィは内心ほっと胸を撫で下ろす。
「で――、なんかうんうん唸ってたのは、マシンの使い方が分からないんだろう?」
さすが生まれた時から一緒に居るだけある。
匠海はヴィヴィの顔を小馬鹿にしたような表情で見下ろしてくる。
「むぅ……確かにその通りでございます……」
一瞬頬を膨らませそうになったヴィヴィだったが、素直に置かれた状況を認めた。
「俺がやってやるよ」
困っているヴィヴィを見かねたのか、匠海はそう言うと「席変わって」と言い、一つしかないミキサールームの席を譲らせた。
「え……いいの?」
言われるがままに席を替わったヴィヴィだったが、慌てた表情で匠海に尋ねる。
「スケートに関して、俺は見てるだけしか応援の仕方がなかったからな……。ちょっとは関わらさせて」
「……お兄ちゃん……」
ヴィヴィはそんな風に匠海が思ってくれているとは知らず、驚いて匠海を見返す。
その胸の中は驚きと嬉しさが込み上げていっぱいだった。
(お兄ちゃんが見てくれているだけで、ヴィヴィは幾らでも頑張れるのに――)
「ほら、どう編集したいか言って?」
ちょっと涙目になってしまったヴィヴィに気付いたのか、匠海は先を促す。
「あ……。えっとね、まず0:05~1:29を使って、5:20~6:28と繋げて、8:01~9:35と合わせたいの」