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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第87章
(ヴィヴィの “王子様” はずっと、お兄ちゃんだったから……。
馬上の姿は貴公子そのもので、
インターハイで優勝しちゃうくらいその腕も確かで。
もちろん馬を下りてもカッコいいままで、学校にファンクラブまであった……)
匠海が幼稚舎~高等部まで在籍していた名門私立――学習院。
なかなかコネがないと入学に辿り着けないといわれているその幼稚舎に入園出来たのは、ひとえに匠海の生みの母親の実家のおかげだと聞いている。
ヴィヴィは詳しくは知らないが、代々財界や著名人との関わりが深い家系だったと聞く。
( “王子様” ……か……)
小さく嘆息したヴィヴィは、いつの間にか俯いていた視線を競技場に戻す。
噂のリアル王子様が、ちょうど競技に入るところだった。
(あんなに優しくて繊細で美しかったヴィヴィの “王子様” が、今では “エロ変態絶倫王子” になっちゃった……くすん……)
そう酷過ぎる形容詞で頭の中の匠海を扱き下ろしていると、隣の席から小さなシャッター音が聞こえた。
クリスがスマートフォンで馬場の写真を撮っていた。
自分をじっと見ているヴィヴィに気付いたクリスが、妹に向けてシャッターを下ろす。
「あ、クリス。カレンと撮って~?」
「いいよ。はい、チーズ……」
カレンとピースで写真を撮ってもらったヴィヴィは、クリスとも写真を撮った。
「ありがと~! しかし暑いな~……」
ヴィヴィは照りつける直射日光に我慢ならず、持参していたタオルを頭から被る。
一部屋根のある席があるのだが、もちろん只の学生の自分達の席にはそんなものはない。
8月最終週とはいえ今年は信じられない猛暑で、実際マラソン競技では、何名か脱水症状で選手が棄権しているらしい。
「う~ん。確かにこういう時、ツインテールは涼しいかも」
そういうカレンは、長い金髪とシャツの間にタオルを挟み、涼を取っている。
「そうだよ! なんせ首に髪が付かないからね? カレンもしようよ~」
ちなみに予備のゴムあるよ? とヴィヴィは鞄を漁ろうとしたが、止められた。
「しないよ~。ヴィヴィは童顔だから似合うの」
「ちえ~」
結局3時間ほど観戦した生徒達は、また学年別で引き上げる事になった。