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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第87章           

 1年生、2年生、3年生の順に1本ずつずらして電車に乗るので、しばらくヴィヴィ達は会場出口で足止めを食らった。

「熱~っ 結局1時~4時って、一番熱い時間に観戦に来てんじゃんっ」

 アレックスが死にそうな声を上げながら、半袖の白シャツの首元をパタパタさせる。

 その首には紺地に赤のラインのネクタイが巻かれているが、もう緩みまくっていた。

「ね~……。死にそう……」

 白シャツにネクタイ、紺地タータンチェックのスカート、紺のハイソックス姿のヴィヴィも、汗だくだった。

「各自、熱中症にならない様に、水分こまめに取れよ~」

 今頃になってそう注意を促す担任に、3年生全員がうつろな瞳を向けた。

「あの……、クリス君……ですよね?」

 皆が英語やフランス語で騒いでいる中、恐るおそる日本語で声を掛けてきた女子3名に、ヴィヴィはぱっと振り向く。

「あ、はい……」

「キャ~っ! こんなところで会えるなんてっ 観戦ですか?」

「あ、学校の課外授業で……」

 テレビとは違いぼそぼそと通常運転で返すクリスを、その女子達が取り囲む。

 そして何故か、ヴィヴィの前にはその姿を隠すようにアレックスが立ち塞がった。

(アレックス……?)

「きゃっ 学生服だ! かっこいい! 一緒に写真撮って貰えませんか?」

「え……。ちょっと、それは……」

 無表情ながら困惑の色を瞳に浮かべたクリスに、ジェイソンが助けに入る。

 フランス語で怒涛のように女子達に絡み始めたジェイソンに、女子達以上にクリスがびっくりしていた。

「えっ? 何? 何語?」

「わかんない……っ なに言ってるの?」

 それでなくても190cm近くあるジェイソンにビビった女子達が半べそ状態になり、さすがにクリスがフォローする。

「学校行事中なので、失礼します……。ごめんなさい……」

 まだフランス語で喋り続けるジェイソンを引っ張って、クリスはヴィヴィ達のところに戻って来た。

「あはは、ジェイソン。助けに行ったのか、邪魔しに行ったのか分かんないよ!」

 ジェシカのその突っ込みに、ジェイソンはにやりとする。

「え~、俺はナンパしに行ったの」

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