この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第87章           

(そうだ。全ては自業自得。

 自分で蒔いた種。

 なのに、ヴィヴィは簡単に逃げ出そうとしてしまった

 ――自分の犯した罪から)

「お嬢様……」

「ごめんなさい、変な事を聞いて。冗談よ」

 そう言ってくすりと笑ったヴィヴィに、朝比奈が怪訝そうな表情を浮かべる。

「お嬢様……?」

「冗談よ」

 自分の執事を真っ直ぐと見上げたヴィヴィのその言葉に、朝比奈は一瞬静止し、そして頭を垂れた。

「畏まりました。お嬢様」

「もう寝るわ。おやすみなさい」

 静かにソファーを立ち上がったヴィヴィに、朝比奈も立ち上がり黙礼する。

「おやすみなさいませ」

 テーブルの上のティーセットを片付け始めた朝比奈は、ヴィヴィが寝室の扉を閉めようとした時、呼び止めた。

「お嬢様」

「……なあに?」

 朝比奈に背を向けたまま、ヴィヴィは返事を返す。

 しかし、その後に朝比奈が続けた言葉に、ヴィヴィはゆっくりと振り返った。

「これだけは、忘れないでいて下さい」

「え……?」

「私はお嬢様とクリス様の幸せを、心から望んでおります。それは匠海様の幸せや、ご主人様、ひいてはこの篠宮家の繁栄よりも、です」

「朝比奈……?」

 自身の雇い主である父よりも、ただの小娘の自分を取ると言ってのけた朝比奈に、ヴィヴィは当惑してその名を呼ぶ。

「どうしても何ともならない時、誰かの助けを借りたい時、ご自分を見失ってしまわれた時……。どうか、私の事を思い出して下さい。私は貴女の幸せを願っている。決してお嬢様の不利益になることは致しません」

 そう言葉を締め括った朝比奈に、ヴィヴィは心底驚いた。

 保父の様に優しい男だと、心穏やかな男だと、そうとばかり思っていた。

 けれど本当は違う。

 本当は誰よりも人一倍自分の信念を貫く、そして自分の揺るぎ無い価値観を持った強い男だった。

「………………」

「長々と、失礼致しました。お休みなさいませ」

 そう言って一方的に話を打ち切った執事に、ヴィヴィは静かに返した。

「おやすみ、なさい……」

 寝室の扉を閉めたヴィヴィは、のろのろとベッドへと近づくと、そのまま倒れこんだ。

 ぼすっと音を立ててベッドに突っ伏したヴィヴィは、その両手でぎゅうと薄い夏布団を握り締める。

/2774ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ