この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第87章
(ヴィヴィは、お兄ちゃんを売ろうとした……?)
自分の握りしめた指先が白くなっていくのを見つめながら、ヴィヴィは更に自分に尋ねる。
(お兄ちゃん一人を悪者にして、楽な場所へ逃げようとした――そうでしょう?)
あと半月程で匠海は留学を終え、この屋敷へと帰ってくる。
この屋敷は、篠宮を継ぐ者が継承するもの。
それは兄のものである事を意味する。
だから自分が屋敷を出て、一人暮らしをしようと思っただけだった。
正直、匠海と同じ屋根の下で生活し、今までの自分が保てる自信はほぼ皆無だった。
兄は好きな時に『妹』である自分を求めるだろうし、それにより、受験勉強もスケートにも支障を来たす。
もしかしたら続けることさえ無理かもしれない。
そう思い至った自分は、その恐怖からあんな馬鹿丸出しの行動を取ってしまった。
「………………」
どうにもならない。
逃げ場なんてない。
もしそんなモノがあったとしたら、それは匠海を悪者に仕立て上げて、自分が庇護される対象になった時にしか現れない。
例えば、自分は実兄の匠海に無理やり強姦され、処女を奪われ、その後も近親相姦を強要されている――そんな嘘出鱈目を並び立てたり、とか。
『後1ヶ月……、俺を待っていられるね?』
『……ヴィヴィ……、ヴィクトリアは……、
お兄ちゃんの帰り、を、東京で、待っています……』
半ば強引に約束させられたその事から、自分は逃げ出そうとした。
自分は一応トップアスリートだ。
華奢な見た目以上に、体力はあるほうだと思っている。
毎日兄に抱かれ続けても、もしかしたら何とか今まで通りの生活を送れるかもしれない。
しかしそれは、そこに心というファクターが存在しなかった場合だ。
自分には心がある。
まるで抱き『人形』のように、兄に毎日好きなように抱き潰されれば、きっと自分の心は折れる。
正直、自分の心は打たれ弱い――特に、匠海に関して。