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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第87章
心が付いて行かなくなると食事が取れない。
体重が減る。
夜に眠れなくなる。
そしてその後に待ち受けるのは、何もかも中途半端に熟し、そしてクリスをはじめ、周りの皆に心配と迷惑を掛ける駄目な自分。
そんなものにはなりたくない。
だから――、
(全て自分一人で、解決しなければ……)
ヴィヴィはその思いを心に刻む。
もう誰にも迷惑も心配も苦労も掛けたくない。
ならば一人で全てを解決するしかない。
「………………」
(『ご自分を見失ってしまわれた時』か……)
朝比奈の言葉を思い出し、ヴィヴィはゆっくりと目蓋を瞑る。
(ずるい。
この人は、本当に狡い。
こうやって少しずつ、少しずつ、ヴィヴィの心を侵食していく――。
時間を掛けて、少しずつ抉り取られて、浸食されて。
それに気づいた頃には、
いったい『自分』には何が残っているのだろう……?)
以前、匠海に抱かれながらそう心の中で思った言葉。
『自分』が『自分』でなくなった時――ヴィヴィはもうここには、存在しないかもしれない。