この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第88章
このカフェテリアでは、冷凍イチゴとミルクを使ってジューサーで作ってくれるのでとても美味しく、ヴィヴィはずっとリピーターだった。
砂糖不使用、蜂蜜少なめ。
ヴィヴィの好みをきっちり把握してくれているスタッフは、ぱぱっと作ると学生ID証をリーダーにかざした自分の前に、とんと置いた。
「ヘイ、お待ち~っ」
その江戸っ子な返しにヴィヴィは笑う。
「イチゴ多めにしといたよ、ビタミンたっぷり。がんばんな、受験生!」
「うそっ ありがとう! ん~美味しいっ」
一口飲んでほっぺに手を添えてにんまりしたヴィヴィに、スタッフは満足そうにひらひらと手を振って寄越した。
予鈴が鳴るのを耳にしながら、教室へと歩いて戻る。
自分だけじゃない。
大変なのも、不安なのも、焦っているのも、みんな一緒。
そう自分に言い聞かすと、空いている片手でぺちりと頬を叩く。
「……っしゃ~~っ!」
本当に乙女らしくない掛け声を掛けると、ヴィヴィはスキップでもしそうな軽い足取りで教室へと戻る。
「ハイホー、ハイホー、仕事が好き~♪
(口笛)ヒュ、ヒュヒュヒュ、ヒュヒュヒュヒュ♪
ハイホー、ハイホー♪」
ツインテールをなびかせながら、1人愉快に小人の歌を唄い廊下を歩くヴィヴィを、通り掛かった下級生や教師がぽかんと見つめていた。
が、やはり当の本人は全く気にしていなかった。
「は~い、じゃあ、多数決の結果……、BST School Festival(学園祭)2020の出し物は、リバーダンスでっ!」
クラスリーダーのその鶴の一声で、総勢20名の3年生はワッと活気付いた。
「YEAH~っ!!」
「きゃ~っ とうとう最後の学園祭か~、ドキドキしてきたっ!」
「俺も! この受験戦争の鬱々とした気分を、思いっきしぶつけてやる~っ」
特に国内受験組がそうハイテンションで騒ぐ中、その“から元気”を見破った留学・就職組が「まあまあ」と諭す。
「裏方や雑用は、自分達が請け負うから、国内受験組はとにかく練習重視でな?」
「え? いいの? ありがとうっ」