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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第88章                  

 このカフェテリアでは、冷凍イチゴとミルクを使ってジューサーで作ってくれるのでとても美味しく、ヴィヴィはずっとリピーターだった。

 砂糖不使用、蜂蜜少なめ。

 ヴィヴィの好みをきっちり把握してくれているスタッフは、ぱぱっと作ると学生ID証をリーダーにかざした自分の前に、とんと置いた。

「ヘイ、お待ち~っ」

 その江戸っ子な返しにヴィヴィは笑う。

「イチゴ多めにしといたよ、ビタミンたっぷり。がんばんな、受験生!」

「うそっ ありがとう! ん~美味しいっ」

 一口飲んでほっぺに手を添えてにんまりしたヴィヴィに、スタッフは満足そうにひらひらと手を振って寄越した。

 予鈴が鳴るのを耳にしながら、教室へと歩いて戻る。

 自分だけじゃない。

 大変なのも、不安なのも、焦っているのも、みんな一緒。

 そう自分に言い聞かすと、空いている片手でぺちりと頬を叩く。

「……っしゃ~~っ!」

 本当に乙女らしくない掛け声を掛けると、ヴィヴィはスキップでもしそうな軽い足取りで教室へと戻る。

「ハイホー、ハイホー、仕事が好き~♪

 (口笛)ヒュ、ヒュヒュヒュ、ヒュヒュヒュヒュ♪

 ハイホー、ハイホー♪」

 ツインテールをなびかせながら、1人愉快に小人の歌を唄い廊下を歩くヴィヴィを、通り掛かった下級生や教師がぽかんと見つめていた。

 が、やはり当の本人は全く気にしていなかった。 








「は~い、じゃあ、多数決の結果……、BST School Festival(学園祭)2020の出し物は、リバーダンスでっ!」

 クラスリーダーのその鶴の一声で、総勢20名の3年生はワッと活気付いた。

「YEAH~っ!!」

「きゃ~っ とうとう最後の学園祭か~、ドキドキしてきたっ!」

「俺も! この受験戦争の鬱々とした気分を、思いっきしぶつけてやる~っ」

 特に国内受験組がそうハイテンションで騒ぐ中、その“から元気”を見破った留学・就職組が「まあまあ」と諭す。

「裏方や雑用は、自分達が請け負うから、国内受験組はとにかく練習重視でな?」

「え? いいの? ありがとうっ」

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