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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第88章                  

「な~。カッコいいの、出来ればいいな」

 マイクが楽しそうにそう返す中、ヴィヴィはアイリッシュ・ダンス用のハードシューズに履き替え、そこでステップを踏んでみる。

 ガラス繊維が張られたつま先と底の厚いシューズが奏でる、そのこぎみ良い音にクリスが耳を傾け、席を移動しながら響き具合を確認する。

「うん、いいね……。よく響いて、カッコいい……」

 そうこうしていると、カレンやアレックスも合流し、振り付けの確認や登場の仕方等を何度も何度も繰り返し行った。

「あっち~っ 講堂、クーラー点けさせてくれよ~っ」

 締め切った講堂から出て、クーラーが効いて涼しいラウンジスペースに、皆がぐったりとソファーに座りこむ。

「まあ、客席まで冷やすとなると、結構な電気代かかるからな~」

「クーラーの効く多目的ルーム、押さえといて正解だったな」

 3年生の教室で練習すると、通常授業の1・2年生にタップの音が五月蠅いと言われる事は目に見えているので、練習には多目的ルームを使っていた。

 個別学習を終えたクラスメイト全員が集まり、多目的ルームでダンスリーダーを中心に、1時間みっちりダンスの練習を行った。

「ヴィヴィ~、シャワー浴びて帰らない?」

 クーラーが効いているとはいえ、ずっとダンスをしているので正直汗はかく。

 カレンのその誘いに、クールダウンのストレッチをしていたヴィヴィが頷く。

「そうする~。自分が汗臭い……」

 他の女生徒と連れ立ってシャワールームへ移動すると、手早くシャワーを浴びて制服に着替えた。

「まだ、ワンピースは着れないな~。いつまで続くんだろう、この暑さ……」

 9月半ばを過ぎたというのに、日中最高気温が30℃越えの日々が続き、ヴィヴィはお気に入りのワンピタイプの制服が着れなくて不満だった。

 今は半袖白シャツに、膝丈の紺地に赤ラインのタータンチェックスカートにネクタイ、紺のソックスで過ごしている。

「そだね。なんやかんや言いながら、ヴィヴィはワンピの方が見慣れてて、しっくりくるわ~」

 カレンがそう言って笑う。

 正直、女生徒の殆んどが中等部までしかワンピを着ない……子供ぽく見えるから。

 ヴィヴィはウエストが締め付けられないのが好きで、夏以外は愛用していた。

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