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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第88章
「東京五輪……。観に行きたかったな~、くそ~っ」
心底悔しそうにそう漏らした匠海に、クリスが「送った写真、見た……?」と尋ねる。
「見た見た。いいな~、双子は。課外授業で五輪の馬術を観に行けたなんてな」
羨ましそうに双子を見比べる匠海のその言葉に、ヴィヴィは週刊誌に撮られた事を思い出し、笑顔の上にも何とも言えない表情を浮かべた。
「あ、うん……。そうだね……」
妹のその様子に「どうした?」と匠海が尋ねて来たが、双子は「「なんでもない」」と揃って首を振った。
「そうか? あ、お土産買って来たぞ~。ほら、こっちがクリスで、こっちがヴィヴィ」
匠海はそう言って五十嵐から大きな箱を2つ受け取り、双子に渡した。
「わあっ いっぱい、色々入ってるっ!」
30cm四方のその箱には、沢山のお土産が入っていた。
「凄い……。開けてもいい……?」
クリスも驚いて、そう言って兄を見返す。
「もちろんだよ」
「わあっ! これ可愛い~。衛兵の恰好したクマさんストラップ! これは? クラシックローズ……?」
ヴィヴィが掌よりも少し小さいサイズの缶を、匠海に見せる。
「それはアロマキャンドル。企業とエリザベス女王が総裁の英国王立園芸協会との、共同開発なんだって」
「あ、僕の方にも、同じの入ってる……。こっちは、イングリッシュラベンダー? いい香り……」
他にもエリザベスタワー(旧ビックベン)の缶に入った茶葉、ショートブレッド、ミントキャンディー。
ヴィヴィの方にはバグパイプを抱いたテディベアの縫いぐるみ等、クリスのほうにはマンチェスター・ユナイテッドのマフラー、大学のTシャツ等、とそれぞれ双子が喜びそうなものがぎっしり詰まっていた。
「ありがとうっ すっごく嬉しい!」
ヴィヴィが満面の笑みで匠海を見つめると、兄は嬉しそうに瞳を細めていた。
「僕も。凄く嬉しい。ありがとう……。でも、これだけ色々揃えるの、大変だったんじゃない……?」
卒論や英国支社での引継ぎ、寮からの退去と多忙だったでろう匠海に、そう気遣いをみせたクリスに、兄は首を振って笑った。
「あとこれは、BSTの3年生へのお土産」
そう言って匠海が差し出したのは、免税店の袋にぎっしり詰まった、英国のお菓子の数々。