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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第88章                  

「可愛い縫いぐるみ。どこに飾ろうかな~」

 20cm程のそれを手に立ち上がったヴィヴィは、広いリビングの一角にある、ガラス張りの白いキャビネットに近付く。

 今まで獲ったメダルやトロフィー、盾、新聞社から頂いた写真等を飾ったそこに、バグパイプを抱いたテディベアを置いてみると、いい感じに馴染んでいた。

 どうせならばと、英国の世界選手権で取った金メダルの傍に飾ろうと、キャビネットの中身の配置を変えていると、かちゃりと扉の開く音がした。

 そちらを振り返ったヴィヴィは、2人の部屋を繋ぐ扉に立っている兄に気づく。

「ヴィヴィ、ちょっと」

「なあに?」

 手をこまねく匠海に、ヴィヴィは不思議そうに首を傾げる。

「渡し忘れたプレゼントがあった」

「えっ!? もうこれ以上、貰えないよ」

 キャビネットのガラス扉を閉じたヴィヴィは、焦って匠海の傍へと駆けて行く。

「あんなに一杯貰ったのに……、え……?」

 匠海の目の前に立った途端、その手首を掴まれ、兄の部屋へと引き摺り込まれた。

 扉と鍵を閉めた匠海は、ヴィヴィを寝室へと連れ込むと、その扉と鍵も閉めた。

(お兄ちゃん……?)

 先程までの笑顔が嘘のように、急に脅えた表情を浮かべたヴィヴィを、匠海はその胸に抱き寄せた。

「ヴィクトリア……。悪い……」

「……え……?」

 知らぬ内に躰を強張らせていたヴィヴィは、兄のその言葉の意味が分からず、微かに声を漏らす。

(悪い……?)

「帰った早々、ごめん……。っていうかお前、どんだけ可愛いんだよ?」

 まさかの兄の発言に、ヴィヴィはその胸の中で間抜けな声を上げる。

「……へ……?」

(可愛い……?)

「その恰好、反則だろう?」

 少し抱擁を緩めた匠海が、上からヴィヴィを見下ろして囁く。

「え……、いつもこうだけど?」

 毎日この格好でBSTに通っているのに、どこかおかしかっただろうかと、ヴィヴィは匠海を見上げて首を傾げる。

「制服にツインテールって、何? 俺に襲えって言ってる?」

 何故か悔しそうな表情を浮かべ、目を眇めてみせる匠海に、ヴィヴィは絶句した後、咄嗟に言い返す。

「―――っ!? い、言ってないっ!」

(な、なんで“制服にツインテール”が誘ってる事になるのっ?)

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