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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第88章
「いいや、俺はそう取った! 抱くぞっ」
そう勝手に宣言した匠海は、ヴィヴィをひょいと持ち上げてベッドへと運んでいく。
「えっ!? だ、駄目っ」
ヴィヴィは焦って兄を止めるが、匠海はベッドに腰掛けると、妹を自分の腰に跨らせた。
「駄目じゃない。そんな恰好で俺を煽るお前が悪い。責任取れ」
「……――っ」
(え゛ぇ~~っ!?)
「ちょっと待ってっ い、五十嵐、来ちゃうっ!」
元旦に着物で無理やり抱かれている最中、五十嵐が匠海を寝室まで呼びに来た。
もうあんな恐怖を感じたくなどなかった。
「大丈夫。ダッドと大事な仕事の話があるからと、人払いしてる。廊下への扉も鍵を閉めた」
匠海の言う通り、廊下への扉とヴィヴィの私室への扉を施錠すれば、外壁を登ってくる以外にこの部屋には近付けない。
「え……。 あ、でも、ヴィヴィ……クリスと勉強っ」
匠海と対面する前、頭の中でディナーまでクリスと勉強しようと考えていた事を思い出し、ヴィヴィはそれを口にする。
「もうディナーまで50分しかないぞ? さすがにクリスも、勉強に誘いに来ないだろう?」
腕時計を確認してそう冷静に返してくる匠海に、ヴィヴィは心底焦る。
「あ、えっと……。え~っと……」
(他に、他に何かないっ!? この場を切り抜けられる言い訳は……っ)
「ヴィクトリア。キス、しよう……?」
「……お兄ちゃん……?」
「キスしたい……。駄目か?」
そう懇願してくる匠海が何だか可愛くて、ヴィヴィの頑なな心が揺らいだ。
「……キス、だけ……?」
(キスくらいなら、別に……いいかな?)
匠海とする優しくて柔らかなキスは、自分も好きだ。
「う~ん。取り敢えずは」
「と、取り敢えずはって……っ ん、ぅ……っ」
ヴィヴィの言葉を遮って奪われた唇は、ちゅっちゅと何度も啄まれ、角度を変えて互いの表層を触れ合わせる優しいものだった。
ちゅうと唇の合わせ目を長く吸い付かれ、兄の唇が離れた途端、ヴィヴィは悔しそうに言い募る。
「……ヴィヴィ、まだ、いいよって、言ってない……」
「嫌だったか……?」
哀しそうな表情でそう確認してくる匠海に、ヴィヴィは返事に困る。