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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第88章
籠っていた熱がその出口を見つけたかのように集まり、そして一気に大きな塊となってヴィヴィの背筋を突き抜けていった。
「ふぅっ あっ ぁあんっ やぁ……っ あっ あ、―――っ!!」
匠海に抱かれていた華奢な肩が、その腕の中でびくびくと大きく戦慄き、いつの間にか兄の指を自分から迎えに行っていた腰が空中で強張り、やがてぽすりとベッドに落ちた。
「ああ、気持ち良さそうにイったね。いい子だ」
まだ震えの止まらないヴィヴィのおでこにちゅうと吸い付いた匠海は、心底嬉しそうに妹の顔を覗き込んでいた。
「おにい、ちゃん……、ぁン……」
ゆっくりと抜かれた指にさえ甘い声を上げてしまったヴィヴィは、それが恥ずかしくて自分から匠海の胸に飛び込んだ。
ティッシュで濡れた指を拭いた匠海が、大事そうに胸の中に自分を引き寄せてくれる。
「ずっと、ヴィクトリアの感じてる甘い声、聴きたかった……」
「……え……?」
耳元で囁かれたその言葉に、ヴィヴィは小さく聞き返す。
「ロンドンでは、あんなふうにしか抱けなくて、悪かったよ……」
「……お兄、ちゃん……」
(う、そ……、お兄ちゃんが、ヴィヴィに謝るなんて……)
ヴィヴィはまさかのことに驚き、兄の腕の中で瞳を見開く。
抱擁を緩めた匠海が、苦しそうな表情で自分を覗き込んでくる。
「俺だって、あんな風に抱きたくなんてなかったよ。あんな、ヴィクトリアの口にタオル捻じ込んで、声、我慢させて……っ」
「………………っ」
(本当、に……? 本当……?)
兄の言葉をすんなりと信じられるほど、今のヴィヴィは何も知らない少女ではなかった。
兄には沢山傷つけられたし、軽んじられ、裏切られた。
けれど兄を信じたい自分もいた。
その複雑な胸中を表わす様に揺れる瞳を、匠海は真っ直ぐに射抜いてくる。
まるで、妹の心中など全てお見通しで、それでも俺を信じろと言われている様なその強引な瞳から、ヴィヴィは目が離せなかった。
「可愛い喘ぎを聴きながら、思いっきりお前を抱きたかった。ここで……。この寝室で……っ」
「……――っ」
匠海のその言葉に、ヴィヴィは息を飲んだ。