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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第88章                  

「俺も……。物凄く気持ち良かった」

「物、凄く……?」

「ああ。ヴィクトリアの中、本当に狭くてきつくて……気持ちいいよ」

「……えっち……」

 そう言葉にされると恥ずかしくて、ヴィヴィは視線を落とした。

「あと、まるで蜂蜜でも入ってるのか? って思うほど、蕩けてるし」

「……っ や……っ」

 あまりの言い様に、ヴィヴィは咄嗟におでこを兄から離した。

「ふ。いつまで経っても恥ずかしがり屋で、可愛いよ」

 そう囁いてくる匠海こそ、何だか可愛かった。

 彫りが深くて目鼻立ちがはっきりしている、いつも大人っぽい兄の美しい顔が、今は何だか緩みまくっている。

「…………ゃんっ」

「あ、可愛いって言ったら、ヴィクトリアの中、また動き始めたぞ?」

「やぁっ」

「あぁ……っ 気持ちいいっ ヴィクトリア……、凄くいいよっ」

 匠海はゆっくりと、腰をヴィヴィに擦り付けてきた。

(え? もしかして、まだやるの……っ!?)

「お兄ちゃん、もうダメっ! ヴィヴィ、練習行けなくなっちゃうっ」

 ヴィヴィはそう強く言うと、両手を匠海の胸上に付いてその躰を押し退けた。

「行くなっ!」

「ええっ!?」

 いきなりの兄の豹変ぶりに、ヴィヴィは思わず叫んでしまう。

「お前を縛り上げて、ずっとここに閉じ込めてしまいたいよ。これからはずっと一緒だ。本当に、俺だけのものだ……っ」

 妹が突っ張っていた両手を掴んだ匠海は、ぐっと引き寄せるとまるで怒ったような顔でヴィヴィを見つめてくる。

「……そうだよ。ヴィヴィはずっと “お兄ちゃんのもの” だよ?」

 それは自分で言い出した事だし、今も間違いなくそう思っているので、ヴィヴィは自ら口に出した。

 けれど――、

(本当に……。どうしてこんなに執着してくれるのに、愛してはくれないんだろう……?)

「じゃあ、もうしないから、このままキスしていいか?」

 その兄の要望に、ヴィヴィはゆっくり頷く。

「キス……だけなら……」

 困ったように兄を見つめるヴィヴィに、匠海が顔を傾けて唇を奪ってくる。

「んっ ……ふぅっ ……ん」

 下唇を食まれて、ぺろりと舐め上げられ、ヴィヴィの鼻から細い息が漏れる。

「ヴィクトリア……」

「……おにい、ちゃん……」

 少しずらされた唇から零れるのは、互いを呼ぶ声。

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