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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第88章
「そうじゃなくて……っ ああもうっ お前が可愛過ぎるって言ってるだけだっ」
「……? ふうん……?」
(よく、分かんない……。まあ、お兄ちゃんは “エロ変態絶倫王子” から “エロ変態絶倫ロリ王子” に昇格したけど……。う~ん、舌噛みそう……)
「ヴィクトリア。本当に、躰、大丈夫か?」
心配そうにそう尋ねてくる匠海に、ヴィヴィは微笑む。
「うん……」
(お兄ちゃん……、凄く優しく抱いてくれたから……)
「ごめんな、本当に。夜に抱く気だったのに……」
そう謝ってはぁと深い息を吐き出した匠海が意外過ぎて、ヴィヴィは目をぱちくりとさせた。
「そんなにヴィヴィ、可愛かった……?」
(なんてね~?)
「ああ。今からでももっと抱いて、足腰立たなくしてやりたいくらい、可愛いよ」
そう言ってにやりと嗤った匠海に、ヴィヴィの顔が引き攣る。
「……は、はは……」
身の危険を感じたヴィヴィは、乾いた笑いを漏らしながらゆっくりと一歩下がった。
そんなヴィヴィを見て苦笑した匠海は、ベッドサイドの時計に気付き、ベッドから立ち上がる。
「後10分しかない。ほら、着替えてダイニングに行こう?」
「うん。後でね……?」
「ああ」
兄と別れたヴィヴィは、寝室の扉と二人の部屋の間の扉を開錠し、手早くディナーのために準備する。
適当にワンピースを選んだヴィヴィは、ウォーキングクローゼットの中で制服を脱ごうとし、その手をふと止めた。
姿見に映るのは、いつもの制服姿の幼い自分。
「………………」
しばらくそれをぼうと見つめていたヴィヴィの口元が、くっと口角を上げた。
そしてその小さな顔に浮かんだのは、何か悪巧みをしている様な表情。
(でも、そうか……。お兄ちゃん、制服好きだったとは……。いいこと知った……ぐふふ)
にやりと少女らしくない笑みを浮かべたヴィヴィは、まるで鼻歌でも歌い出しそうなほど上機嫌で制服を脱いだのだった。