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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第89章
匠海が帰国したその日の夜。
双子は両親と匠海を囲んでディナーを取った。
匠海と離れていた1年半を少しでも埋めようと、皆が我先に兄に話しかけ、それはとても素晴らしい夕食会だった――最初の1時間は。
「クリス……。ヴィヴィ、もう、リンク、行こうかな……?」
「……同意……」
双子は目の前で繰り広げられる“両親と匠海の吞ませ合い”に呆れ果て、席を立った。
「二人とも、頑張れよ~……」
そう死にそうな声で双子を見送る匠海に、二人は「「そ、そっちもね……」」と言い置いてリンクへと向かったのだった。
4時間半みっちりサブコーチの特訓を受けた双子は、疲労困憊で屋敷に戻った。
「あ~……、ストレッチ不足……。足、だるいかも……」
3階までの大理石の階段を登りながら、ヴィヴィがぼそりと呟く。
「あ……、学園祭の準備……?」
クリスのその言葉に、ヴィヴィは軽く頷く。
「それもあるかも……。もう一回ストレッチして、マッサージするね」
「うん……。僕も、しておこう……。おやすみ」
「うん、おやすみなさい」
双子はクリスの私室の前で、就寝の挨拶とハグを交わして別れた。
ヴィヴィは荷物を片すと、リビングにマットを敷いてストレッチを始める。
(アイリッシュ・ダンスって、腰から下しか使わないから、結構足腰への負担、あるな……)
スケートも勿論足を使うスポーツなので、余計疲れてしまっていた。
でもクラスメイトとの練習はとても楽しいし、自分を取り巻く色々なストレスから解放される大切な時間になっていたので、頑張りたい。
コンコンというノック音に、ヴィヴィは「はい?」とマットの上から返事を返す。
「ヴィヴィ……、あれ、どこだ?」
聞こえてきたのは匠海の声。
どうやら兄から見たら、自分はソファーセットの死角に入っているらしい。
「ここだよ~」
と両手を上げれば、匠海の「何してるんだ?」という不思議そうな声と足音が近づいてくる。
「うん、ストレッチ……。ちょっと足がしんどくて……」
視界に現れた匠海に、マットにぺたりと開脚したヴィヴィがへらっと笑う。