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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第89章
「足……? ふうん……、ちょっと待ってろ?」
「え……? あ、うん……」
なにやら思案顔で自分の部屋へと戻って行った匠海に、ヴィヴィは小さく首を傾げながらまたストレッチを再開する。
数分後、何故か朝比奈が現れ、その手には大きな陶器のボウルを抱えていた。
「どうしたの、それ?」
「ええ。匠海様がお使いになりたいと」
「お兄ちゃんが?」
朝比奈のその答えに、ふくらはぎのマッサージをしていたヴィヴィはこてんと首を傾げる。
「朝比奈。ありがとう、お湯を張ってきてくれるかい?」
匠海が戻ってきて、朝比奈にそう指示をする。
「これ、エプソムソルトっていうんだ。欧米では古くから入浴剤として馴染みがある」
兄が渡してくれたのは、白い粉が入ったビニールの袋。
「入浴剤……。あ、フットバス?」
「そう。硫酸マグネシウムの湯に浸かると、足のむくみや筋肉疲労に効く」
匠海の説明を訊いていると、朝比奈が湯を湛えたボウルを手に戻ってきた。
白皮のソファーの前に置かれたボウルに、匠海がエプソムソルトを溶かし入れる。
「ほら、入ってみて?」
匠海に促され、ヴィヴィはボウルの湯に足を浸そうとして気付いた。
「あ……、クリスも呼んでいい? 多分、足疲れてるから」
「もちろん」
そう言って微笑んだ匠海に、朝比奈が「私がお呼びしてまいります」とクリスを呼びに行った。
「ふうん……。ぽかぽか、するね……」
さっそく足を浸したヴィヴィは、匠海を見上げてにっこりする。
「初めてだから10分位で止めておきなさい。ヴィクトリア、“あれ”以外は薬、飲んでないな?」
「“あれ”……? ああ、うん。飲んでない」
ピルの事だと思い至ったヴィヴィは、こくりと頷く。
「血中マグネシウム濃度が上がるからな。明日トレーナーに、使用することをきちんと報告しておきなさい」
「うん。そうする」
兄の忠告に素直に頷いていると、朝比奈に伴われてクリスが入ってきた。
「フットバス? いいね……」
クリスはヴィヴィの隣に座ると、ルームシューズを脱いで足を浸けてくる。