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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第89章            

「マグネシウムは“ミネラルの王様”と呼ばれていて、酵素の活性化や筋肉の収縮に関与してるんだ。カルシウムと関連して骨も強化されるし、精神を鎮める作用もある」

 匠海のその説明に、クリスが顔を上げる。

「へえ……。兄さん、英国で使い始めたの……?」

「ああ。疲れた顔をしてたらしくて、寮の友人に勧められたんだ。俺は風呂にバスソルトとして使ってる」

「そうなんだ~。なんか、汗かいてきたっ」

 ヴィヴィは頬を桃色に染めて、ぱたぱたと手で顔を扇ぐ。

「デトックス効果があるからね。ちなみに、英国のエプソムという地域で発見された塩みたいな物――からエプソムソルトって名前が付いてる」

 匠海の補足情報に、双子は「「英国発祥か~」」と感慨深そうに顔を見合わせた。

 10分後には身体がポカポカし、足の疲労も和らいだ双子は、揃って匠海のお礼を言った。

「いいもの教えてくれて、ありがとう、お兄ちゃん!」

「ありがとう……。明日から、使おう……」

 匠海は双子を見比べて「どういたしまして」と笑った。

 その後、就寝準備を終えたヴィヴィは、日付が変わる頃、ベッドへと入った。

(うん……。ほんとに足が楽ちん。凄いすごいっ)

 軽くなった両脚にほっとしたヴィヴィだが、もう1つ気になることがあった。

(お兄ちゃん……。今夜、する……のかな……?)

 帰国して顔を会わせた早々、匠海に抱かれた事を思い出し、ヴィヴィの頬がぽっと赤くなる。

 帰った早々えっちするなんて、と失意のどん底に落ちそうになったヴィヴィ。

 けれど匠海に心の底から求められて、優しく抱いて貰えて、凄く嬉しかった。

 しかし、絶倫(とヴィヴィは思っている)の匠海には、あれでは物足りなかったのでは? とも思ってしまう。

「………………」

 思わず緩んでいた口元が、徐々に引き結ばれる。

 今日のセックスが『飴』だったとしたら、次に与えられる『鞭』は、どれほど酷いものなのだろう。

 そう思うと、ぞっとした。

 耐えられるだろうか。
 
 もし耐えられなかったその時、自分はどうなるのだろうか。

 そして、これはいつまで続くのだろうか。

 匠海は何のために、こんな事をしているのだろうか。

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