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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第89章
「……ヴィヴィ以外に、いるの……?」
「え?」
「えっちする、相手……」
そう聞いたヴィヴィに、匠海は物凄く意外そうな表情を浮かべた。
「どう思う……?」
「……分かん、ない……」
(分かりたくもない……。不特定多数の女を、一人で相手するような関係なんて……)
ヴィヴィのその答えに、匠海は苦笑した。
「ふ……。いないよ。少なくとも1年半は日本に居なかったんだからな、俺」
「…………そうだね」
そう相槌を返したヴィヴィは、すっと兄から視線を逸らした。
(それって、今から相手を見つける、って言ってるようにも聞こえる……)
「馬鹿。ヴィクトリア以外、興味無いって」
苦笑した匠海は、妹の頬を柔らかく撫でてくるが、今日のヴィヴィは頑なだった。
「……嘘……」
(だって、年末年始……、他人の香水の匂いを付けて、朝帰りしたじゃない……)
そう心の中で匠海を責めていると、頬に添えられていた手がすっと引かれた。
「じゃあいい」
「……――っ」
兄の厳しい声にはっと視線を戻したヴィヴィは、匠海が自分を真っ直ぐと見下ろしているのに気付いた。
「俺が信じられないなら、それでいい。それでも俺は、お前を抱くけどな――?」
これは決定事項だと宣告するようにそう言ってのけた匠海は、ぎしりと音を立ててベッドから立ち上がった。
背を向けて寝室を出て行こうとする匠海に、ヴィヴィはばっと跳ね起き、裸足のまま兄に駆け寄りその背にしがみ付いた。
「……ごめん、なさい……」
「………………」
無言のままの匠海に、ヴィヴィは更に力を込めて兄の腹に腕を回す。
「信じる……。お兄ちゃんの事っ」
(お願いっ 何か言って……、口答えした馬鹿なヴィヴィを許して……っ)
「本当に、ごめんなさい……っ」
泣きたくなんてないのに、胸が張り裂けそうに苦しくて、勝手に涙が零れた。
兄を怒らせてしまった。
兄の言う事を信じられなかった。
ちゃんと「自分以外に興味が無い」と言ってくれたのに。
「お兄ちゃん……っ 許し、て……」
お願いだから許して。
ヴィヴィを捨てないで。
やっとここまで来たのに――躰を繋げる相手にまでなれたのに――!