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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第89章
(今でも、信じてないけれど……、信じられないけれど……)
けれど、自分は信じなければならないのだ、兄の言う事を全て。
こうなってしまったのは、全て自業自得なのだから――。
例え心の中で兄の言う事を否定しようとも、それを口に態度に出してはいけなかったのに。
「………………っ」
調子に乗ってしまった。
昨日の匠海がとても優しくて、まるで自分を愛してくれているかのように錯覚させてくれたから。
「……なんて、馬鹿……」
ヴィヴィはくぐもった声でそう自分を叱ると、枕から顔を上げ、ベッドから出た。
朝練を終えて登校したヴィヴィは、個別学習を物凄い集中力で終え、早々に多目的ルームでダンスの練習をしていた。
次第に勉強を終えたクラスメイトが集まりだし、がやがや騒がしくなって行くのが嬉しい。
女子チームでカレンをリーダーに練習していると、クリスがヴィヴィにお菓子の入った袋を渡してきた。
「あ、そっか」
ヴィヴィはクリスに頷くと、みんなに声を掛ける。
「うちのお兄ちゃんの、英国みやげなんだ~。みんな好きなの食べて~?」
「え~っ やった~っ! 美形お兄様のお土産っ 何があるの~?」
ネットで衣装の確認をしていたケイトが瞳を輝かせて歓声を上げれば、アレックスがお菓子を覗きに寄って来る。
「おっ 俺、これ好き。ショートブレッドにグミにファッジにチョコレート……。旨そうだけど、咽喉乾きそうだな」
「あ、じゃあヴィヴィ、飲み物買ってくる。みんな何がいい~?」
「俺、ダイエットコーク」「ファンタ!」「アイスティーっ」と皆が口々に言うのを、ヴィヴィは記憶していく。
12名分聞いたところで、隣のクリスが心配そうに尋ねてきた。
「ヴィヴィ、覚えれた……?」
ヴィヴィは自信満々に笑う。
「全然覚えれてない~、あはは」
皆に「駄目じゃ~ん」と突っ込まれたヴィヴィは、結局皆と一緒に飲み物を買いに行くのであった。