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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第89章            

 余程疲れていたのか、すぐにうとうとしだしたヴィヴィは、自分の頭を撫でてくる手に気付いてゆっくりと目蓋を上げた。

「……おにい、ちゃん……?」

「ただいま」

 暖かな声でそう囁かれ、ヴィヴィは目をぱちぱちしながら上半身を起こそうとして、寝かされた。

「お、おかえりなさい……」

 スーツ姿の匠海に、今日は帰国後初の本社出勤だったのか、と思い至る。

「添い寝してやろうと思ってな」

 そう抑えめの声量で囁かれると、なんだか兄の声が余計色っぽく聞こえ、どきりとする。

「え……、疲れてるのに……」

 もう日付が変わっている時間に帰宅した兄は、相当疲れているのでは? とヴィヴィは心配になった。

「ああ。だから妹君の可愛い顔を拝んで、癒されようと」

「……ヴィヴィで、癒される……?」

「とってもね」

 そう言って微笑んだ匠海は、ゆっくりとヴィヴィに覆い被さってきた。

 ヴィヴィの胸ぐりの空いたナイトウェアの上に、ぱさりと兄のネクタイが落ちたと思った途端、唇を奪われた。

「あ……、んぅ……」

 柔らかく重ねられる唇に、胸がとくりと高鳴る。

 大きな掌で頭を撫でられながら何度も表層を啄まれると、その気持ちよさにうっとりとしてしまう。

(良かった……、お兄ちゃん、まだヴィヴィに、キスしてくれる……)

 ぺろりと薄い唇を舐められ、ヴィヴィの華奢な肩がくすぐったそうに震えた。

「ミントの味がする……」

「ん……、ミントティー……、ぅんっ」

 就寝前、鬱々とした脳内をクリアーにしたくて自分で淹れて飲んだのだが、それを説明しようとした途端、開いた唇に兄の舌が潜り込んできた。

 まるで口内のミントの残り香を舐め取るようなその舌使いに、ヴィヴィは兄の首に両腕を回して縋り付いた。

(きもち、いい……。もっと、して……?)

 その気持ちを込めて自分からも積極的に兄の舌に絡ませていたが、やがて匠海のほうから唇を離してしまった。

「……っ はぁ……」

 名残惜しくて甘い吐息を零してしまったヴィヴィの鼻の先で、匠海が面白そうに笑う。

「ふ……。そんなとろんとした顔して。やるぞ?」

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