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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第89章
兄が自分の頭の傍に突いていた肘が、重心が掛けられたことでぎしりと鈍い音を立て、ヴィヴィがぴくりと震えた。
「え……っ」
(ヴィ、ヴィヴィだって、出来ればしたいんだけど……、その……)
心の中でそう焦って言い訳をするヴィヴィを、匠海が笑いながらその頭を撫でた。
「ふっ 冗談だよ。おやすみ」
そう言ってスプリングから腰を上げた匠海は、ベッドから離れていく。
「お、おやすみなさい……」
その背中に挨拶すると、匠海はちらりと振り返って片手を上げて出て行った。
「………………」
ヴィヴィは薄い唇の上に細い指を添え、その感触を確かめる。
兄のより薄い、潤った感触が指の腹を跳ね返す。
匠海のしっとりした唇を思い出し、兄は自分の唇が気持ち良かったかどうか、少し不安になった。
(優しい、キスだった……。もっと、して欲しかった……)
セックスは1日置き。
そう分かっているのに、兄に優しく触れられると、自分はもっとと求めてしまう。
(せめて、夢の中ででも、お兄ちゃんと一緒にいられたら……)
そう願いながら、ヴィヴィは安らかな眠りに落ちた。
9月19日。
土曜日のその日、双子は早朝からリンクで滑りこんでいた。
「今日はまた、昨日とは打って変わって、いい感じ」
SPを滑り終えた娘へのジュリアンのその感想に、ヴィヴィは満面の笑みを浮かべる。
「昨日の柿田トレーナーの指示、守ってやってみました」
「そう……。で、何を想像したの?」
にやりと悪そうに微笑んだジュリアンがずいっと迫ってくるのに、ヴィヴィは焦りながら背を仰け反らせる。
「え゛……っ!? ひ、秘密ですっ」
(まさか、昨夜のお兄ちゃんとのちゅーの“喜び”を広げて気持ちを整えたなんて、い、言えない……っ)
「え~っ 気になるじゃな~いっ!」
そう駄々っ子のように追及してくるジュリアンから、ヴィヴィは早々に逃げたのだった。
昼過ぎに帰宅した双子はランチを取ると、もうそれは猛勉強していた。
ヴィヴィは世界史が苦手だ。
東大の世界史の出題は、第1問:大論述、第2問:中論述、第3問:一問一答。
そう論述なのだ。