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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第89章
(ん……? “片思い”も恋愛かな……? ん~~……)
そうどうでもいい事を考えていると、かちゃりという開閉音とともに寝室の扉が開いた。
「ヴィクトリア、さっさと来なさい」
開口一番そう言って寄越したのは、勿論、兄の匠海。
茶色のバスローブを纏った兄は、別に機嫌が悪い訳ではない――ただ、今日が『鞭』の日だから高圧的なのだ。
ヴィヴィはぱっと飛び起きると、戸口に立ったままの匠海を真っ直ぐに見つめる。
「あ……っ ちょっと先に行って待ってて? ヴィヴィ、すぐに行くから」
けれど匠海はその妹の返事が、大層お気に召さなかったらしい。
「は? いいから来いよ」
語気が荒くなり始めた匠海に、ヴィヴィは慌ててベッドから降りると、その傍へ駆け寄った。
「お願いっ すぐに行くから。今日、ヴィヴィ、何されてもいいから。お願い……、ね?」
そう懇願したヴィヴィは、とどめと言わんばかりに背伸びをして、兄の頬にちゅっと口付けた。
「……さっさとしろよ?」
しぶしぶ了承した様子の兄が自分の寝室へと戻り始めたその背中に、ヴィヴィはお礼の言葉をかける。
「うん。ありがとう、お兄ちゃん」
そして数分後。
2人の私室間の扉と匠海の部屋の扉の施錠を確認したヴィヴィは、兄の寝室へと足を踏み入れた。
「……――っ お前っ ずるいぞっ!」
キングサイズのベッドの上、茶色のバスローブを纏い、まるで王の様に踏ん反り返っていた匠海がそう喚き立てるのを、ヴィヴィは不思議そうに見返す。
「え? 何が?」
「―――っ!? 制服を着るなっ」
驚愕の表情を浮かべる匠海を見つめながら、ヴィヴィは後ろ手に寝室の扉を施錠する。
そして両手で膝上10cmのタータンチェックのスカートを摘まむと、可愛らしく横に広げて見せた。
「いいでしょう? 何を着ようが、ヴィヴィの自由だもん♡」
「くそ……っ」
まさかの妹の暴挙に口汚くそう発した匠海の元へ、ヴィヴィはスキップでもしそうな軽やかな足取りで向かった。
もちろん紺のハイソックスを纏った脚には、ローファーまで履く念の入れようだ。